自分って丹下段平かな?
それとも、映画ロッキーでのミッキー?
はたまたマイク・タイソンのカス・ダマト?
いきなり何を書きだしたのかとお思いでしょう。けど、ふと思ったんです。
我々施術者って、いきなりボクシングの試合に呼ばれたセコンドみたいなものじゃないかしら?って。
それも、1ラウンドが終わった時点で急遽呼ばれる。そして、2ラウンド開始のゴングが鳴ったら「はい、終了。後ろ向いて」と指示され、2ラウンド終了のゴングが鳴ったら「はい、ボクサーがコーナーに帰ってくるからよろしくね」とまた依頼される。で、また次のゴングが鳴ったら「はい、終了。また後ろ向いてね」といった具合で、試合を観ることが一切許されていないセコンドです。
「は?ナニ言うてんの?頭おかしいんとちゃう?」とお思いでしょうけど、まぁまぁ、ちょっと聞いてください。
例えば初めての患者様をお迎えする時の場合です。
患者様は痛みやツラさを抱えてご来院されます。問診表のご記入をいただき問診をし、検査をして患者様の症状の原因を想定して施術をし、施術後の検査をもとに次回ご来院までの日常生活上のアドバイスをし、ご予約をいただき患者様にお帰りいただきます。
二回目のご来院では、症状がどうなっているかを確認します。症状の度合いや出方を確認し、どのような生活を送っておられたか、どんな時に症状が強まったか、弱まったかをお聞きし、それらを踏まえて原因を想定してまた施術をし・・・以下同文となります。
もちろん、ご来院の時点でオールオッケーなら万歳。患者様とご相談の上、次回以降のメンテナンスのお話をします。
ね?
「ね?じゃねぇよ!」ですね。もちょいとお付き合いください。
急遽呼ばれたけど、試合を観ることが出来ないセコンド
呼ばれたはいいけど、どんな選手か分からない。コーナーのイスにドカッと座った選手は1ラウンド終了の時点で痛そうにしていますが、その選手がこの1ラウンドでどんな戦い方をしたのか分かりません。どんなパンチをもらったのか分かりません。また、その選手がボクサータイプなのかファイタータイプなのか?キャリアや戦績はどのくらいなのか?どんな性格の選手なのか?この試合に向けてどんな練習をしてきたのか?等々も。
そして当然ですが、同様に対戦相手についても分かりません。
しかも、セコンドに許された時間はわずか1分間です。興奮している試合中の選手と冷静に話をして情報収集している余裕はありません。
施術者
ご来院された時点では、どこがどう痛いか分かりません。目の前の患者様はツラそうにされていますが、何をしていて痛くなったのか、どんな状態だと痛いのかは分かりません。また、その方が普段どのような生活を送っておられるのか?今までも痛くなったことがあるのか?普段何かしら予防のようなことを心掛けているのか?等々。
そして当然ですが、痛みやツラさの度合いや原因も分かりません。
ただセコンドの人と違って、我々施術者にはある程度の時間があります。
問診票を書いてもらったり、お話をお聞きしたり、検査したり、施術したり・・・と。セコンドの方には1分しかありませんから、それを思えば恵まれすぎ、超ラッキーです。「共通する」だなんて滅相もないですね。
ただ、その場で必死に情報収集をしなくちゃいけないっていうのは「共通する部分」だと思います。
そして、2ラウンド開始のゴング。
急遽呼ばれたけど、試合を観ることが出来ないセコンド
知りえた情報をもとに精一杯のアドバイスをして選手を送り出しますが、試合を観ることが出来ませんので次のゴングがなるまで選手がどんな戦い方をしているか分かりません。相手がどんなパンチを出しているか、もらっているかも分かりません。
施術者
施術後の検査を元に患者様に日常生活でのアドバイスをしてお見送りをしますが、一緒に生活するわけにはいきませんから次回のご来院まで患者様がどんな日常生活を送っているのか分かりません。どんな時に痛みが現れたか、強まったかも分かりません。
2ラウンド終了のゴング。
急遽呼ばれたけど、試合を観ることが出来ないセコンド
帰ってきた選手の様子や話ぶりから、次のラウンドに向けての簡易な手当てをしたりアドバイスをします。
施術者
現在の状況やご来院までのご様子をお聞きし、再度検査・施術・術後検査を踏まえてアドバイスをします。
その後は、この繰り返しです。
そして、試合終了のゴングが鳴り響きます。
勝った場合のセコンド
選手とともに喜びを分かち合います。で、先ずは試合で痛めた体のメンテナンスをし、次の試合に向けたトレーニングを再開します。
患者様の痛みがなくなった場合の施術者
患者様とともに喜びを分かち合います。そして患者様とご相談の上、次回以降のメンテナンスのお話をします。
といった具合です。
負けた場合のセコンド
「じゃかぁしぃっ!そりゃそうだ。いきなり呼ばれて勝たせろ?無茶言うなよっ!」とブチ切れてもいいでしょう。
症状を改善させることが出来なかった施術者
・・・これは滅茶苦茶みじめな気分になります。ホント、消えてしまいたいくらいです。
急遽呼ばれて、1ラウンドでも早いラウンドで、選手を勝利に導けるセコンドになりたいなぁ・・・という独り言でした。