自転車乗ってて坐骨神経痛 その2

「(さぁ、今日はAさんが来る日だ。日曜のサイクリング、どんなかったかなぁ・・・)」

こういう時って、受験の合格発表の朝みたいな気分になります。

「いやぁ、全然シビレんかったわぁ(=合格!)」

だったらいいんやけどなぁ、いや、もしかして

「アカンわ、全然変わらんかったわぁ。やっぱり2時間くらいで(シビレて)来よったわい(=不合格)」

だったらどうしようとか・・・ホント、朝からソワソワしてます。

 

午前中、一本の電話が。

「・・・ハイ・・・ハイ、じゃ、先生に変わりますね。少々お待ちください」

というスタッフさんの電話応対の声が、こちらの治療中に聞こえてます。

「失礼します」

「はい」

「先生、Aさんからなんですけど、今お電話出られますか?」

「おぉっ、どしたんじゃろ・緊急事態じゃろか?〇〇さん(今、治療中の方です)、ちょっとだけ失礼してもいいですか?」

「おお、ええよぉ。どしたんかいねぇ」

「ありがとうございます。じゃ、ちょいとお言葉に甘えて・・・」

 

こういう場合、人間性が出るんでしょうね。

アメリカンフットボールのオフェンスライン生活で鍛えられたせいか、基本マイナス思考なんです(詳しくは、また別の機会に^^;)。

パターン1「ゴルァっ!めっちゃ痛かったがん!どーしてくれるんじゃ!」

パターン2「先生、今日行く言よったけど、やめよわい」

パターン3「こないだの後痛なって、日曜行かんかったんよ」

とか、妄想がガンガン膨らんでしまうタチなんです。

 

恐る恐る受話器を

「お待たせしました。Aさん、どうされました?」

先生、今日行く言よったんじゃけど(・・・ウワッ!パターン2か?)、新しい人、連れてってもええ?

「(ヌヌヌっ!全くの別パターンだ!)あ、はい。いいですけど、その方どうされました?」

「一緒に走りよるBっちゅうオッサンなんやけど、月曜起きたら脚が痛ぉて起きれんようになってしもたらしいんよ」

「えぇーっ、大丈夫っすか?」

「で、昨日病院行って痛み止め打ってもろて、痛み止めの薬ももろたらしいんじゃけど、全然変わらん言いよんよぉ」

また、ここで変なスイッチが入っちゃいました。

(痛み止めの注射も薬も効かん?よっしゃ、どんと来いよぉ)というスイッチが。

「分かりました。けど、Bさん、移動は大丈夫なんでしょうかねぇ?」

「おぉ、それはワシが車に乗っけて行こわい」

「はい。じゃぁ、気をつけてお出でて下さい。あ、もし車の移動も激痛やったら、無理せんようにして下さいね」

「スマンねぇ、じゃぁ、また後で頼んます」

 

(Aさんの様子、聞くん忘れとった!ま、ええか。来た時聞こ)

 

で、夕方、Aさんの来られる時間。車から降りて来られるBさんのお姿が見えました。

(あぁ、なるほど。痛そうです)

 

で、自動ドアがウィー―ン。

「Bさんですね。ツラいのにすみません。大丈夫ですか?(てか、大丈夫じゃないから来られとんじゃがな^^;)」

「は、はい、なんとか・・・」

(「なんとか」って、まるでダンスの決めポーズ前みたいな状態っすよ)

思いっきりカッコつけたらこう

フォー――ッ!

「あ、じゃぁね、コレ使ってベッドの方まで歩いてみましょうか?」

実はウチの秘密兵器の一つなんです

「え?」

「はい、これをこうやって・・・どうですか?」

「おぉ!歩けるねぇ」

「(でしょ?と来ると話は簡単です)ま、でも気をつけて・・・コッチです。ちなみに座れますか?」

「いやぁ、座っててもキツイんですわぁ」

「じゃ、横向きは?」

「まだ、横向きの方がええねぇ。けど、横向きは横向きで、ちいとしたら痛なるんよ」

「それってどの辺ですぅ?」

「お尻の横や、脚の付け根や、脚全体やったり、何やよぉ分からんのよ。スマンねぇ(苦笑)」

 

いやいや、十分ヒント頂きました。

「で、Bさん。お注射やお薬はどんなですか?」

「いやぁ、よぉ分からん。もしかしたら、効いとってこのくらいで済んどんのかも分からんよなぁ」

「なるほど。けどアレですね。月曜(日曜に走った翌朝)起きたら痛かったんですよね。起きて立ったら痛かったですか?起きようとしたら痛かったですか?」

「うぅ~ん・・・よぉ覚えとらんのじゃが、気が付いたら痛かったから、立つ前にはもう痛かった思うなぁ」

「了解です。ちなみに、今はどうです?歩こうとしたら痛みが強なります?それとも、力が入らないから歩けない感じですか?」

「痛いから脚に力入れたない感じじゃねぇ・・・あ、ボチボチお尻の右側が怪しなって来よらい」

「OKです。どんな治療するかAさんから聞いてます?」

「うん、なんか電気ビリビリすんじゃろ?」

「はい。お聞きするんですが、心臓のペースメーカーや人工関節とか、ナニか金属を・・・」

「んにゃ、そんなもんは無いからええよ」

「じゃ、何はともあれ、やってみますね。Bさんの今の症状は固ぉなった筋肉が起こしている状態じゃぁ思いますので、その原因になっとるヤツに刺激入れる治療やっていきます。これで、いい感じになったら、やっぱりそこが原因じゃぁ言うことになりますから。ちょっと響くけど、頑張れるだけ頑張ってみて下さいよ。キツかったら言ってもらえたらええですから」

 

で、治療開始。

自転車ガンガンに乗るオッサン(後で問診票書いてもらったら70手前)が、朝起きたら右脚の激痛で立ち上がれない。とすると、症状のメカニズムはAさんとほぼ同じ。症状の現れ方が違うだけ。あそことあそこがこうなってるから、電気のモードはコレを使って、あそこの手前のアイツやアイツをやっつければ・・・で、治療終了。

こんな大げさなワケありません

「Bさん、お疲れ様です。取り敢えず、ベッドに坐ってみましょうか?ご自分のタイミングでいいですよ。そうそう、肘とか腕をええ感じで使って・・・」

「あれ?座れた!さっきまでは座るまでが地獄じゃったんよ。ホンマ」

「じゃぁね、さっきの机使ってもいいんで、立ってみましょうか?」

「あ、うん、あ、でも、手ぇついたら立てそうじゃわ」

「無理せんといて下さいよ」

「うん、まぁ、ほい・・・おぉ!立てたわい。まっすぐ。なぁ、Aよ。まっすぐ立っとるじゃろ?」

「おぉ。けど、歩けるんか?」とAさん。

「そうですね。ちょっと、歩いてみましょうか?」

で、ゆっくり歩きだすBさん。

「おぉ、歩けるわい。歩ける・・・(と5mほど)・・・けど、外くるぶしの上あたりが、だんだん痛くなって来よらい」

「了解です。じゃぁ、Bさん。もうちょっとお時間いいですか?今の治療のもうあとひと押しやっちゃいましょう」

 

多分、“見立て”に間違いはないと思います。

逆に言えば、その“見立て”が合ってれば、その後の展開も見えてきます。

つまり、度合いは分かりませんが、必ず痛みは再発します。

1回の治療で「オールOKにはなりません(キリッ!」

ですので、痛みの場所や痛み具合、翌朝起きた起きた時の状態が改善の目安になります。

それを踏まえての注意事項をお伝えし、明日ももう一度診せていただくようにお願いしてお帰りになりました。

 

あ、帰り間際にAさんにお尋ねしました。

「で、Aさん。岩城橋までの行き帰り、脚はどうでした?」

「ん?あぁ、まぁ、よぉ分からんかったわ(笑)」

照れ屋のAさんらしく、ハッキリとはおっしゃっていただけませんでしたが、最後の笑顔で分かりました。

合格!だったんだと。