いやぁ、まいったです。
「まさか、そんな事を真顔で言ってるだなんて」、と思ったエピソードを。
ウチは「腰痛・坐骨神経痛」をU.S.P.(売り)に頑張っているのですが、とは言え、そうじゃない方が全く来られないかというとそうでもないんです。
既存の患者様からのご紹介ということで、肩や膝、なんなら自律神経失調症的な方も来られます。
今回は、奥様が腰痛で来られている患者様のご紹介でご主人様がご来院下さいました。
年齢60歳手前ですが、テニスを頑張って来られている方です。
ただ、ここで「頑張っている」のレベルが「ワタシ、週何回やっているんですよぉ」とかではなく、色んな大会に真剣に取り組まれて来られており、脚の肉離れが片手じゃ治まらないくらいやっているのに続けてらっしゃるというレベルの男性です。
確かに、パッと見スポーツマンで、ふくらはぎもテッカテカして、「ん?ただもんじゃないな」とすぐ分かります。で、長年テニスをやってらっしゃるからなのか、私とほぼ同世代なのにすごく爽やか(石黒賢的な)感じがする方です。
右肩や両膝のお悩みでご来院になりました。
「この辺がいつも気になるんですよぉ」
「なるほど。痛みはあります?」
「そうですねぇ、ヒドイとテニスが出来ないくらいにですね」
「マジすか?どんな動作で(痛みが)きます?」
「やっぱりサーブですかねぇ」
「ふむふむ。これ、細かいこと聞くんですけど、振りかぶる、打つ、打った後とか、一番痛いのって分かりますか?」
「そう言われると、打つ時ですかね?」
「今、バンザイ出来ます?」
「あ、出来ますよ。今は、そんな痛みはないんです」
「無いけど気になる、と」
で、バンザイされますが、左右ともに挙げる角度に大きな差異はありません。
「ちゃんと挙がりますね。で、今、気になりますか?」
「そうですね、やっぱりココらへんですね」
「なるほど。『ココ!』って言うよりは『ココらへん』ですね」「じゃ、ここはどうですか?」
「う~ん、いやぁ、特には・・・ですね。あ!あとですね、こうすると挙げにくいんですよ」
と、おっしゃるや否やベッドに仰向けになられました。
「ね。こんな感じなんです。こうすると、なんか奥の方で嫌な感じがするんですよねぇ」
「(あ!そうか。もしかしてと思ってたけど、だったらそうだわ)了解です。とすると、〇〇さん、右肩上にして横向きに寝てもらっていいですか?」
「ん?こう?」
「そうそう、でね・・・ココつまんで痛くは・・・」
「あ痛たたた。キマスねぇ。実はそこ肉離れしたことあるんですよ」
とおっしゃられたのがココです。
自分も結構な回数で肉離れはしたことがありますが、ココをぉ???
ま、患者さまのご意見を否定出来るような材料は持ってませんし、もしかしたらテニス選手あるあるかもと思い、その後チェックしながら施術をさせていただき、ストレッチやちょっとした体操をお伝えしました。
で、施術後のご感想で
「あぁ、確かに、さっきより『気になり具合』が減りましたね」とのお言葉。
ただ、ビックリしたのは、その後に続くお話でした。
「病院の先生には、『年齢もあるから五十肩かな?』と言われ、よく行ってる□□院さんでは『三角筋の前側を痛めているから』とそこに電気当ててたんですがイマイチで、これまたよく行く△△整体では『骨盤から背骨にテニスのクセで歪みがあるから』と骨盤矯正をしてもらったりしてたんですけど、原因はコレだったんですね」
マジか?
次から次へと忙しい病院の先生の話は論外として、三角筋の前部繊維を痛めていたなら『気になる』程度じゃスマンだろうし、坐位でも仰臥位でも挙げると痛いの変わらんでじゃろ?おまけに△△整体?「骨盤や背骨が歪んで」???
よし、仮にそうだったとしましょ。
骨盤のどこ(ランドマークとなるような場所)が何に対してどう歪んでいることが、肩関節前方挙上の際にどう影響するのか言ってみりゃれ。
で、
その肩関節の痛みを改善するために骨盤のどこをどう戻すのかも。
あと、いつも思うけど、羽生結弦選手が氷上でジャンプしても、何なら転倒してもビクともしない骨盤を、何をどうやって思いのままに動かすの?
いや、まぁ、人の身体はまだまだ謎が多いです。「これが完璧な答えだ」というものは永遠に無いのかもしれません。ただ、検証可能な材料なく施術するのは「当てずっぽう」か「魔法」だと思います。身体に関する仕事をしているのであれば、せめて解剖学や運動学を拠り所に話が出来なければ、あまりに無責任だと考えます。
○○さんの「ココらへん」は、肩ではありますが、広背筋の付着部でもあります。「奥の方で嫌な感じ」という○○さんの表現も、アスリートとして常に自分の身体に向き合っているからこその感覚なのだと思います。
で、「坐位では気になるものの普通に挙げられるのに、仰臥位では」というのは、
仰向けで寝る=背中がベッドにつく=広背筋に圧迫がかかり動きに遊びがなくなる→肩関節前方挙上に制限がかかる
ということではないでしょうか?
水泳選手を見るとよく分かりますが、広背筋は「水をかく(=挙げた腕をグイっとおろし後ろに回すような動作」」時に頑張る筋肉です。水泳選手が最も特徴的に発達する筋肉です。
腕を振り下ろすような動作がある競技、水泳はもちろん、ボールを投げる野球選手、剣道の選手、で、○○さんのようなテニスやバドミントンも。
ココを肉離れしたことがあるという○○さんのお話はにわかに信じがたいのですが、この筋肉を酷使したにもかかわらずキチンとしたメンテナンスが出来ていない(柔軟性が落ちる)と、肉離れに近い引き付け、いわゆる「こむら返り」のような状態は何度かあったかも知れませんね。
ですので、右肩上で横向きになってもらい、そこをグイっとつまむと「あ痛たたた」となったわけです。
今回、特に痛い状態でご来院されたわけではありませんので、○○さん的にも「治った!」みたいな感覚はなかったと思いますが、今後も元気に楽しく激しくテニスを頑張って頂くためのアドバイスは出来たかな?とちょっと鼻高々な気持ちです。
と、同時に、「まさか、そんな事を(治療家が)真顔で言ってるだなんて」、と思ったエピソードでした。