先日の10月1日でもう2年になるんですね、猪木がこの世から旅立ってから・・・。
いまだに思い出すと涙が出て来ることもあるのですが、一度聞いてみたかったです。
「猪木さん、腰痛とかなかったんですか?」と。
多分、あの笑顔で
「ムフフ、愚痴言ったって良くなるワケじゃねぇんだから、どーってことないよ」
と笑ってたかも。
「まぁた、受け狙いでワケの分からんことを」とお叱りの言葉を頂くかも知れませんが、コレ結構マジです。
先日のこと、40代男性患者さんとお話してる中で「あ!」と思ったんです。
その方、高校時代はサッカー、大学時代はテニスと、スポーツ一生懸命頑張ってらした方なのですが、社会人になってしばらくしてから、年に何回かの割合で激しい腰痛に見舞われてこられたそうです。お聞きしたところ、現在は研究職に近いお仕事をされてるとのこと。
体形は180cmでガッシリされてて、誰しもが一見しただけで「お、何かスポーツしててな」と思うくらいお尻や脚の筋肉も充実されてます。お腹は年齢相応になんて言うと失礼ですが、ちょいとポッコリ状態ではありますが、決して「おいおい、大丈夫ぅ?」みたいな感じではありません。
ただ、私のような『筋肉変態』からすると、「あぁ、確かに腰痛は起こりそうだな」と・・・
「例えば?」ですよね。
先ず、肩幅が広いんです。
こんな話聞いたことありませんか?
「肩こりは女性に多くて、男性は腰痛が多い」と。
もちろん、腰痛でお困りの女性も、肩こりでお悩みの男性もおられますよ。おられますが、ま、それは置いといて、です。下の二つの図形を見て下さい。
これで「ピン!」ときた方、その通りです。
上の図は女性の、下の図は男性の上半身のイメージ図です。
解剖学的に見て、男性より女性の方が体全体に比べ骨盤が横に広いので、上半身の土台として安定するんです。逆に女性より男性の方が体全体に比べ肩幅大きい(=骨盤が小さい)ので、土台として不安定なんです。とすると、不安定な土台を支える筋肉の負担が大きいから女性に比べて腰痛になりやすい、と。
逆に女性(特に東洋の女性)は肩幅に比べて頭が大きいので肩こりになりやすい、というワケなんです。
で、上述の男性です。
これまた失礼覚悟で申し上げるなら、上半身がデカい・・・比較すると・・・ええぃっ、すみません。脚が短いんです。
180cmの大柄な男性で、肩幅が広く、骨盤が小さく、脚が短い(=胴が長い)となると
と、普通に生活しているだけなのにメトロノームの振り子の根元みたいな負担が常に腰にかかっている状態です。
「え?けど、スポーツやってたから筋肉強いんでしょ?」
という疑問が湧いてきますよね。
そうなんです。筋肉はホントにしっかりしてらっしゃるんです。
ですが、それがポイントなんです。
今のお仕事は?そう研究職です。
とすると、おそらくですが、あまり動き回らない、なんならジッとしている事が多いのではないでしょうか?しかもデスクに向かったままで。
これは、筋肉の特徴なのですが、筋肉はジッとしている時間が長ければ長いほど、その状態で柔軟性が落ちてしまいます。平たく言うと固くなるんです。
とすると、この患者様。若い頃に鍛えて強くなっている筋肉が・・・そう固くなってしまったがために、頻繁に激しい腰痛に見舞われてしまってたんです。強い筋肉がゆえに症状がキツイ、と言う。
そこで、タイトルに戻ります(前置き、長くてすみません^^;)
猪木・藤波師弟のジャーマンスープレックスの違いに見る腰痛の原因についての考察
プロレスファンの間では有名なのですが、藤波は若い頃から腰痛に悩まされていたんです。
プロレスラーとしては小柄な身長で大きな相手にヘビー級として戦ってきたのですから仕方ありませんが、それだけではなく、「ココが一つの重大なポイントだったんじゃないか?」と思ったんです。
1978年、マジソンスクエアガーデンでカルロス・ホセ・エストラーダに決めたドラゴンスープレックスもそうなのですが、実は藤波のスープレックス(後ろに投げる)はあまりキレイじゃないんです。
下は猪木です。
藤波のに比べてキレイな弧を描いているでしょ?ブリッジともいうのでうすが、藤波のブリッジは一直線に近いんです。投げる動作で言うなら、藤波は相手を引っこ抜いて後方に投げ捨てるようなジャーマンなのに比べ、猪木のそれは、相手を上に持ち上げて円を描くように相手の後頭部をマットに叩きつけるようなジャーマンなんです。音のイメージだと、藤波のは「グイッ、ゴロン」で、猪木のは「グイッ、バシーン!」。
https://www.youtube.com/watch?v=NcIOb5_43LQ
藤波の(これはドラゴンス)ープレックス
https://www.youtube.com/watch?v=yBYX7_ZwEfc
猪木の(これはマスクドスーパースターにかけた)ジャーマンスープレックス
それこそ、タイガーマスクのをご覧ください。
これは1981年の蔵前国技館でのデビュー戦でダイナマイト・キッドに決めた一発です。どうですか、自分の頭とかかとが引っつきそうなくらいにキレイな弧を描いてるでしょ?キッドはほぼ垂直に落とされた感じじゃなかったでしょうか・音で言うなら「グイッ、フワッ、ドカーン!」
https://www.youtube.com/shorts/NLgclR_XxaA
とすると、藤波には若い頃からこういう「弧」を描くのを邪魔する「ナニか」があったということじゃないでしょうか?
藤波の体形と比較すると、猪木の方が肩幅が広いんです。上の患者さん的な条件でいけば猪木の方が「腰痛になりやすい」体形です。
もちろん、腰痛には色々な原因があります。それこそ、常人では考えられないくらい身体を酷使し続けて来た藤波の腰痛は、今自分が挙げた「ナニか」だけでは解決できないくらいな状態なんだろうと思います。
椎間板の摩耗はもちろん、椎体の変性、骨棘による軟部組織や神経への侵襲刺激、その慢性化・・・おそらく、現役を引退されて手術を受けても・・・
下は二人の晩年のお姿です。
最期はアミロイドーシスという難病との戦いでベッドでの生活を余儀なくされた猪木でしたが、その直前まで、「年取ったなぁ」とは感じても、背筋はシャンとして相変わらずのカッコよさでした。
一方の藤波はというと、動画などでご覧になった方もおられるかもしれませんが、常に前かがみでいかにも「腰悪そうだなぁ」という感じです。
「んな事言ったって、お前に何が出来んねん!」とご指摘を受けるかと思います。
ただ、あのマジソンスクエアガーデンの頃に出会えて治療が出来ていたなら・・・というプロレスファンとしての空想くらいはさせて下さい。だって、この二人の師弟がこうやって肩を並べる姿はもう見られないんですから。