インナーマッスルを鍛えるって? その4

ダンベルを使った上腕二頭筋トレーニングで大切なのはゆっくり降ろすこと。

「ダンベルをゆっくり降ろす」ことの中に「インナーマッスルを鍛えるという神髄が隠されています。

前項3で「基本、筋肉は縮むことしか出来ません」と書きました。厳密には「脳からの命令で筋肉は縮もうとする」かな。(同業者の先生方。ここでは相反抑制に関しては省略させていただきますね)

ダンベルトレーニングの分析ぃ!

では、ダンベルトレーニングでは何が起きているかというと、ダンベルを持ちあげる動作はまさに上腕二頭筋が縮む動作です。ダンベルという重いものを持って肘を曲げることで上腕二頭筋にはものすごい負荷がかかり、微細な筋繊維の断裂が起こります。その筋肉が修復する過程で太くなり、大きな力こぶが作られます。

ちなみに筋力はその筋肉の断面積に比例しますから、力こぶが大きくなればなった分、上腕二頭筋が強くなったということです。

で、ダンベルを降ろす時。上腕二頭筋に注目してみましょう。

上腕二頭筋とすると、ダンベルをゆっくり降ろす動作は一度ギューッと縮んだ状態が急に伸びないように頑張る動作です。ギューッと力が入ったまま引き伸ばされる動作ですね。これを遠心性収縮と呼びます。(ダンベルを持ちあげる方を求心性収縮と呼びます)

明確な論文はないそうですが、遠心性収縮を利用した筋トレの方が筋肉の変化率が大きいという報告もあります。

となると、せっかくトレーニングするんですからダンベルをゆっくり降ろさない手はないですよね。

重力に負けないようにゆっくりダンベルを・・・気づきませんか?

インナーマッスルとは「重力に抗して、俺は(私は)人のままでいたいんだ!」という時に頑張る筋肉です。

赤ちゃんがこけないように踏ん張る動作というのは、重力に負けないようにどこかの筋肉が頑張っている動作なんです。ダンベルを急に降ろさないように頑張る上腕二頭筋みたいな働きを、赤ちゃんの体のどこかの筋肉が頑張っているんです。

 

ダンベルを急に落とさない=こけない

「ダンベルをゆっくり降ろす」ことの中に「インナーマッスルを鍛える」という神髄が隠されている、というのはこういうことなんです。

赤ちゃんが日々成長し大きくなる中で、立ったりしゃがんだり、走り回ったりこけたりするでしょう。それぞれの場面で色んな筋肉がインナーマッスルとして働きますが、特に「こける」という動作。

「こけたくない!」と踏ん張る動作は、上腕二頭筋が必死になって「急にダンベルを落とさないように」頑張っている状態です。

そしてこけます。こけて泣きます。で、「次はこけないぞ!」と心に決めてまた走り回って、こける。そうして体が大きくっていく中でインナーマッスルとして働く筋肉達もその体に合わせて・負けないように鍛えられていく。

幼い頃にスポーツをすればなおさら鍛えられることでしょう。

走る、投げる、蹴る・・・そして、その過程で必ずこけます。

取っ組み合う、ぶん投げる・・・こけます。

ダンスなんかもそう。思い通りに体を動かそうとして・・・こけます。

で、それぞれの場面でこけないように頑張るんです。

亡くなったマイケルジャクソンなんて凄かったですよね。

クルクルクルクルーーーっと回ってピタっとポーズを決めるあの姿。

あんなに遠心力が働いてたのにこけないどころか全くぶれない。いったい、どんなインナーマッスルしてたんでしょう。

私がやっていたアメリカンフットボールにはアジリティドリルというのがあります。

出されたサインに俊敏に反応することが求められる練習なのですが、今思えば、オフバランスになった状態からいかに自分のベストの体勢に戻るかが勝負の練習でした。

どんなに体勢が崩れてもすぐにベストのプレーを出来るようにするということは、こけそうになった赤ちゃんがすぐに立ち直ることの延長線上の動作です。

要するにインナーマッスルを鍛えるって?

結論、一生懸命スポーツに取り組めば勝手に鍛えられるんです。

下は、インナーマッスルを鍛えるトレーニングとしてよく目にします。

これらのトレーニングは、背骨やそれを起点にした体が重力に負けて“しならない”よう一直線を保つことがポイントとされます。ダンベルもった肘が伸ばされないようにするアレですね。

もちろん理屈ではその通りです。

ただ暴言覚悟で申し上げるなら、スポーツ初心者には屁の役にも立ちません。

こんな事やってても、そのスポーツに活かせるインナーマッスルが鍛えられるでしょうか?

その競技に必要なインナーマッスルとして働く筋肉は、先ず第一段階としてその競技を通じてでしか鍛えられません。

子供にインナーマッスルトレーニングは不要です(キリッ!・・・言っちゃった

インナーマッスルとは「重力に抗して、俺は(私は)人のままでいたいんだ!」という時に頑張る筋肉で、アウターマッスルは「俺は(私は)人として何かを頑張るんだ!」という時に頑張る筋肉。もちろん、自分の勝手な定義です。

一緒に頑張らないと意味がないんです。無意識のうちに連動しないといけないんです。

自分で自分が思うように動けるようになって初めて、専門的にインナーマッスルを鍛えることにしても何ら遅くありません。だって、その時点でインナーマッスルとして働く筋肉は勝手に鍛えられているんですから。もちろん、あるレベルまでです。さらに高みを目指すのならいわゆるインナーマッスルトレーニングと呼ばれる類のものをするべきですよ。そのレベルに達していれば「このトレーニングはこういう時に必要だな」というイメージを持つことが出来ます。

筋トレといわれるものは、どこを鍛えているというイメージを持たないでやるのは非常にもったいないですから。

先ずは、その競技を頑張る、楽しむ。そしてもっと強くなりたい、勝ちたい、いい演技したい・・・と思うようになった初めてインナーマッスルを鍛えることに取り組む。

これが大事なことだと思います。

「て、それ、子供の話でしょ?大人は?」

あ、忘れてました。それは次回のその5へ続きます。