前かがみしづらい腰痛 その2 前かがみとお尻の筋肉(のさらに奥の筋肉)

「腰を曲げると痛いんです」「どのくらい曲げると痛いですか?」「えぇっと・・・このくらいで・・・痛っ」「え?あ、いや。腰を曲げてみて欲しいんですが」の続きです。

前回の「その1」で

「前かがみで腰を曲げるという動作は股関節を折りたたむ動作なんです」というお話をさせて頂きました。で、

「お尻の筋肉が固くなるとそれができにくくなっちゃいますよ」というお話でした。今回は、そのお尻の筋肉についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

そのストレッチ、どこ伸ばしてるか分かってやってますか?

腰痛の方向けのストレッチの本などで、こういう写真を見たことありますよね。

これ、どこをストレッチしているか分かりますか?お尻を縦に伸ばしているこの写真では

絵の左側にある大殿筋という筋肉が主に伸ばされています。写真は寝っ転がっていますが、これが膝を伸ばして床に足の裏がついているとしたら、そう前かがみですよね。お尻の筋肉がスムーズに伸び縮みすることで前かがみを腰に負担なく楽にするためのストレッチです。

さて、こういう写真も見ませんか?

お尻を横に伸ばしてます。

「え!前かがみと関係ないのでは?」と思われた方。実は大いに関係があるんですね。先ほどのイラストの筋肉をめくると

「えッ!さっきと同じじゃん」

そうなんです。絵の左側にある大殿筋をペロっとめくると、右側のように中殿筋や梨状筋という筋肉が姿を見せます。こういう筋肉があるんですが、筋肉の向きは?・・・そう、横に向いてます。これらの筋肉が固くなっても前かがみがしづらくなるんです。

「気をつけーーっ!」と和式トイレ

さて、話は変わりますが、今日は朝からお腹の調子がおかしいとしましょう。

とその時、とんでもない“ビッグウェーブ”が襲ってきました。今にもダムが決壊しそうです。周りを見渡すと、30メートルくらい先にコンビニが見えました。

「助かった」

と思ったのもつかの間。またまた超ド級の“ビッグウェーブ”襲来。

 

そんな時後ろから「あ、先生こんにちは!」の声。

振り向くと、そこには患者の〇〇さん。

「あ!〇〇、これはこれは・・・」

さぁ、私は〇〇さんにちゃんとご挨拶が出来るでしょうか?

「腰痛と何の関係があんのよ?」

と思われたかもしれませんが、実は大ありなんです。

一度や二度は経験があるかと思いますが、どうにもこうにも“ヤバく”なった時、出ちゃマズイですから、人は肛門にギュッと力を入れてガマンします。その「ギュッと力を入れる」時に肛門をしめる筋肉と一緒に働くのが先ほどの絵の右側の筋肉たちです。

 

試しに、大きい方をガマンするようにしてみてください。お尻の筋肉が固くなっていますよね。

これらの筋肉が固くなるとつま先を外に開こうとします。体育の授業などで

「気をつけーーッ!」とする動作です。

これまた試しに、仰向けに寝っ転がった状態で大きい方をガマンしてみましょう。

つま先、外に開きますよね。これを運動学的に「股関節を外旋させる」と言います。ですので、これらの筋肉は外旋筋などと呼ばれています。

さぁ、改めて立った状態でお尻に力を入れてみましょう。今にも決壊しそうなのでギュッと、ギュッとです。

そして、知り合いから声をかけられました。お辞儀、出来ますか?

そうです。きちんとお辞儀出来ないんです。

お尻に力が入ったままだと首をちょこんと下げることは出来てもお辞儀が出来ません。

「気をつけーーっ!」と和式トイレ、お尻の筋肉では真逆の動きなんです。

ちゃんとしたお辞儀はまさに股関節を中心に体を折りたたむ動作。股関節の屈曲です。

「その1」でお話したお尻の筋肉の下にある、これらの筋肉が固くなっていても前かがみしづらくなってしまうんです。

逆に言えば、スムーズな前かがみ=痛みなく前かがみが出来る=股間節が屈曲するためには、これらの筋肉がスムーズに横に伸びてくれる必要がありますね。

このお尻の筋肉を横に伸ばすようなストレッチも、前かがみしづらい腰痛のためのストレッチなんです。

腰をひねりやすくするためだと思ってませんでしたか?

「その1」「その2」で、前かがみしづらい腰痛とお尻の筋肉についてお話してきましたが、いかがだったでしょうか?なんとなくイメージ出来ましたか?

「よし!じゃ、お尻の筋肉が柔らかくなれば前かがみの腰痛の心配はないんだな」

と思われたかもしれませんが、これまたそうではないんです。

極端な言い方にはなりますが、お尻の筋肉が原因の前かがみしづらい腰痛だと、痛みが出る場所はズボンのラインかその少し下くらいです。

でも実際の痛みはどうでしょう?も少し上の方でも感じていませんか?これはこれで、また他の要因がからんでくるんですが、それはまた、別の機会にゆずることといたします。

ということで、せっかく上のストレッチが「腰をひねりやすくするためにやるんじゃないよ」と書いたので、次回は「腰をひねる」という事について書いてみたいと思います。