「病院で診てもらったら、大腿骨骨頭部壊死が起きてて、5年後くらいには手術かもって言われたんです」
何年か前に通って下さっていた患者様から久しぶりにお電話がかかってきての第一声でした。調理師として病院で働いてらっしゃる50代の女性です。
「ええッ!今、どんな感じですか?」
「はい、脚の付け根や腰が痛くて・・・日によっては違うんですが・・・」
「はい・・・」
「痛みだけでも何とか出来ないか、また診てもらえないでしょうか?」
大腿骨骨頭部が壊死してしまっているとしたらやはり手術しか無いと思いますが、病院の先生が
「5年後くらいには手術」
と、おっしゃっておられるということは逆に言えば
「今すぐ手術が必要な状態ではないということじゃない?」
と考えました。あと、患者様のお電話にあった
「脚の付け根や腰」の痛みが「日によっては違う」
のお言葉。
「むむむ、だとすると、私でもお役に立てるかも」
と思い
「分かりました。じゃ、また一度診せて下さい」
てことで、先日ご来院くださいました。
ご来院され、実際のお姿を見て
確かに、歩き方自体もの凄くツラそうです。
左右に身体を揺らしながら「よいしょッ、よいしょッ」という感じです。
お話をお聞きすると
「股関節骨頭部がレントゲンで白く映っている」
「仕事していると、どんどん痛くなるけれど、場所は脚の付け根だったり腰だったりする」
「階段の上り下りがシンドイ」
とのこと。
大腿骨骨頭部の壊死は、その部分への血行不良によって起こります。
壊死が起きると、骨頭部が欠けたりへしゃげ(陥没)たりします。
ただ教科書的ではありますが、痛みは「骨頭部が欠けたり陥没すると起こる」はず。
で、思いました。
患者様の言う「骨頭部がレントゲンで白く映っている(とお医者様が言っている)」だけで痛むのかな?
そもそも「白く映る」って骨があるからじゃないのかな?と。
そこで考えたのは、逆のストーリー。
股関節骨頭部の壊死が起きているのかも知れないけれど、股関節(タケシさんのコマネチ!の部分)は他の原因でも痛むことがあります。
腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)が固くなっていても、股関節に痛みを感じる事は多々あるんです。
腸腰筋は、背骨の腰の部分と脚の骨の付け根を繋ぐ筋肉ですが、脚の付け根に付く時にその骨を「ぐるっ」と巻き付くようについています。
巻き付くように付く時に、大腿骨骨頭部への血管(回旋動脈と言います)に圧迫がかかると、骨頭部に酸素や栄養が行きにくくなります。
つまり
「大腿骨骨頭部壊死が起きているから股関節が痛い」
のではなく
「その筋肉が固くなると、大腿骨骨頭部に血液を送る血管に圧迫をかけてしまう腸腰筋が固くなっているから股関節が痛み、その結果として大腿骨骨頭部に壊死が起きかけている」
のではないかと考えたんです。それが
「股関節骨頭部がレントゲンで白く映っている」
であって、この腸腰筋は腰と脚をつなぎますので、固くなると腰痛の原因になります。ですから
「仕事していると、どんどん痛くなるけれど、場所は脚の付け根だったり腰だったりする」
というように、腰にも痛みを感じてらっしゃると。
そして、太ももに力を入れる命令を送る神経を大腿神経と呼びますが、その神経は背骨を出て太ももに届く前に腸腰筋を構成する大腰筋と腸骨筋の間を通り抜けてやってきます。
とするなら、固くなった大腰筋と腸骨筋に挟まれて圧迫を受けた大腿神経は脳からの「働け!」という命令を十分に伝えられなくなってしまいます。
ちょっと操り人形をイメージしてみて下さい。
何もしなければグシャってなってますよね。立つためには膝を伸ばさなければありません。
細かく言うと、膝から上の体重を支えながら膝を伸ばさなければならない、でしょうか。
膝の動きだけで見るとサッカーボールを蹴る時のように膝をピーーンと伸ばす動作です。
脳からの「この動作をしろ!」と命令するのが大腿神経です。
とするなら、固くなった腸腰筋がこの神経の命令を届けるのを邪魔すると
「階段の上り下りがシンドイ」
となるんです。だって、階段を上るということは、前に出した脚に全体重をかけて、(膝から上の体重を支えながら)膝を伸ばす動作の連続ですもんね。
(実は、下りの方が大きな影響を受けますが、今回そのお話は省略させていただきます)
もう一度、整理してみますね。
患者様曰く、
「股関節が痛いのは、股関節骨頭部の壊死が起こっているからだと病院で言われました」
「ただ、今すぐ手術が必要なのではなく、5年後くらいかも」
「股関節骨頭部がレントゲンで白く映っている」
「仕事していると、どんどん痛くなるけれど、場所は脚の付け根だったり腰だったりする」
「階段の上り下りがシンドイ」
とのこと。そこで私が考えるのは
・レントゲンで白く映っているかも知ない
・ただし、お医者様曰く「手術するとしても5年後くらい」
・痛みの原因に股関節骨頭部の壊死が関係しているかも知れないけれど、骨頭部が欠けたり陥没が無ければ痛みは起こらないことを考慮すると、痛みの原因として「腸腰筋が固くなってるため」という可能性も捨てきれないぞ
・というのも「日によって痛みの場所が腰だったりする」
・それと「大腿神経の圧迫によると思われる、階段の上り下りの困難」がある
そして、一番最初に書きましたが、患者様の歩き方。
「左右に身体を揺らしながら、よいしょッ、よいしょッ、という感じ」
言い換えるなら、赤ちゃんのよちよち歩き。
これは前後に大股で歩くことが出来ない状態で、腸腰筋が固くなった方もこのような歩き方になる可能性は十分にある。
私のスタンス
病院で診てもらってるのに整骨院で診てもいいの!?
とのご指摘のお声があるかも知れません。
確かに、無責任なことは出来ません。
ただ、お医者様が言うように
「手術するにしても5年後くらい=今すぐ手術するほどではない」
のであれば、せめてそれまでの間、お仕事での痛みを改善させられる可能性があるのなら施術すべきだと私は考えます。
その日、先ず第一回目の施術をさせて頂きました。
よちよち歩きは改善しませんが、歩くスピードは速くなっていただきました。
「痛み?今は半分になったわ」
とのこと。
また追ってご報告させて頂きますね。