やらかした圧迫骨折

いやぁ、やらかしてしまいました。

いや、正確には「やらかして」ないのかも知れませんが、自分の中では「やらかし」た出来事として胸に刻みたいと思います。

 

8月末に来られた患者様です。

ご主人様からお電話を頂きました。

「家内が腰痛で・・・今から診てもらえますか?」

と。お声だけからでも、かなりお困りのご様子なのが感じ取れました。

「もちろんです。頂いたお電話で恐縮ですが、どういったご様子で・・・歩いたりは出来てらっしゃいますか?」

「あ、はい・・・ただ、それも随分とツラそうで・・・」

「そうですか・・・。失礼ですが、病院には行かれましたか?」

「はい。先生によると、特に異常はないとのことなんで、お電話差し上げた次第なんです」

「そうですか。分かりました。しかし、こちらまでのご移動は可能ですか?」

「はい。私が乗せて行きますので」

「分かりました。では、気を付けてお出でてくださいね」

ということでご来院をお待ちして、そろそろかな?という時間に車が一台駐車場に入って来られました。

少し時間が過ぎてご主人に支えられるようにして歩いてらっしゃる奥様(患者様)のお姿が見えてきました。後から分かりますが83歳でらっしゃいました。

この時点で「?」とは思ったんです。直観てヤツです。

問診にて

お二人が入って来られました。

「こんにちは、〇〇様ですね。お待ちしておりました」

と、ご挨拶をしたのですが、この時点で言うべきでした

しかし、言わなかったんです。言えなかったというのが近いかも知れません。

 

とにかく奥様はツラそうです。

取り敢えず中に入っていただき、お名前やご連絡先だけはご主人様に記入いただきながら、その間に問診を・・・

聞くと、2週間くらい前から痛い。数日前に病院でレントゲン撮ってもらったけど異常はない。シップと痛み止めをもらったけど効いてない。横になると楽だけど、寝返りや夜中のトイレがツラい。起きる動作や寝る動作ですごく痛む。椅子に座ってジッとしていてもツラい。

痛む場所は「この辺」と、結構広い範囲をおっしゃられている・・・などなど。

ただ、一番気になったのはお話されているお姿。

イスに座った状態でお話をされている間中、ズーっと前かがみで両手をしんばり棒のようにして上半身をささえてらっしゃいました。

やはり、この時点でお伝えすべきでした。

ただ、言えなかったんです。

そして施術

患部に触らせていただくと少し熱っぽい。

炎症?2週間も経つのに?いや、ここまでの車中や降車時、もしくは歩いてらっしゃる間に「腫れてきた」のか?(今思えば「んなワキャないいだろが!」と自分をツッコミたくなります。しかも、後頭部を思いっきり張り倒す勢いで)

とにかく「炎症を抑えよう。で、何とか一人で立てる状態までにはなっていただこう」と言うことで施術開始。ご主人様は「施術が終わるまで用事をしてきます。終わったら電話を」と、車で出かけられました。

 

こういう場合当院ではハイボルトという電気治療器を使用させていただいております。

 

施術終了

 

「ベッドからの起き上がりは痛いから気をつけて」とお声かけしながら起き上がって頂きました。やはりおツラそうではありましたが

「朝よりは楽です」とのお言葉。

「じゃ、立ってみましょうか。両手を太ももに当てて、支えながらでいきましょう」

とすると、立つことが出来ました。

「少し歩いてみましょうか?」

すると、ご来院された時よりは明らかに足取りが確かなものに。

 

少しホッとしました・・・いえ、今思えば、ホッとしたかったんだと思います。

注意事項やお願い事をお伝えし、翌日もう一度来ていただくことに。

 

ご主人に電話され少しすると車が到着。

10分くらい経っていたでしょうか?「時間が経って果たして痛みはどうかな?」と冷や冷やしながらご様子をおうかがいしていた所、奥様も気づかれたようで「あ、来たみたいですね」と立ち上がられて、お一人でご主人さまのお車まで出て行かれました。

 

お見送りしながら後ろ姿を追っかけていましたが、なんとか足取りもまずまずでしたので

「(要は、明日どうなってるかだなぁ」」と、取り敢えずはひと安心していました。

 

そして翌日

車が到着されこちらに歩いてこられるお姿が見えてきました・・・昨日のご来院時と同じ状態です。

ホントのホント、ここで言わないといけなかったんです。

 

ただ、自動ドアが開くなり「先生、お願いします」の一声。

触らせていただくとやはり熱感が。(けどなぁ・・・)

お話からは、昨日の朝とほぼ同じ状況だと。で、ツラさを何とかして差し上げないと、という思いでとにかく施術。で、で、昨日と同じくらいまでは回復され、翌日のご来院予約をいただきご帰宅。

 

そして翌日

 

そう、同じお姿でした。なんなら、かなりおツラそう。

(「アカン!これはやっぱり言わなアカン」)

「○○さん、今日も施術させていただきますけど、やっぱりもう一辺整形に行ってみて下さい。病院の先生は異常ないとおっしゃられていたみたいですが、私はあると思うんです。圧迫骨折。確かに、ここに来られる数日前にレントゲン撮った時には無かったのかも知れませんけど・・・」

ここで○○さん

「いや、あれは適当に言ったんです。とにかくツラいから、そんなのどーでもいいから、って・・・」

(ぬぬぬっ!そういうことか!そこ、大事なとこやねんけど・・・)

「分かりました。なら、なおさらです。もしかすると、レントゲン撮った後で骨折が起きたのかも知れません。だとすると、ここでの施術で痛みが軽くなったとしても、圧迫骨折は先ずは安静にしないと治りませんから、せっかく来てもらってもこの繰り返しになってしまいます。申し訳ないんですが、病院でもう一度検査してみてもらってくださいませんか」

「はい。けど、痛みはレントゲン撮ってもらう前から変わらないんですけど・・・」

(そうか!見落とし?いや、撮影の角度によっては見逃されてしまうような骨折なのかも)

 

「ですね。でも、自分は○○さんのお姿を診るにつけ、やはり骨折の疑いは大きいんです。もし、いつも診ていただいている先生に言いにくければ、どこか他の先生をご紹介・・・」

「いえ、大丈夫です。また、主人に連れて行ってもらって診てもらいますから」

「ありがとうございます。すみません、途中で○○さんを見放すようなカッコウになってしまうんですが、お手数ですが、もう一度レントゲンをお願いします」

 

そして、数日後

院に一本のお電話が。

 

「はい、りょうたく庵です」

「あ、○○です」

「あ!○○さん、お電話ありがとうございます。どんなですか?」

「今、病院で入院してるんです。やっぱり圧迫骨折してたみたいで・・・」

「(やっぱりか・・・)」

ホッとした半面、というかその数倍後悔が。

 

何度も何度も、言うべきだった一言

初日、お二人で来られた時のお姿見た時の

>この時点で「?」とは思ったんです。直感てヤツです。

コンマ2秒で感じた圧迫骨折という直感。

「○○さん。せっかくですけど、もう一度レントゲン撮ってみて下さい。自分は圧迫骨折があると思うんです」と。

>この時点で言うべきでした。しかし、言わなかったんです。言えなかったというのが近いかも知れません。

なぜ言えなかったのか?お電話でご主人様からお聞きした

>「先生によると、特に異常はないとのことなんです」

の一言と目の前のお姿に、「よっしゃ!じゃぁ、俺が何とかしてやるぞ」という、今思うにある種の「おごり・慢心」があったんだと思います。

確かに、施術の効果はありました。

ハイボルトは非常に優れた電気治療器だと思います。

けど、痛みの改善に効果はあっても、瞬時に骨折を元通りにする機械なんかじゃありません。

 

病院での診断を信用するな!とか、軽視しろ!なんていうことじゃないんです。

先生だって見落とすことはあるし、例えば骨折にしたってそういう見落としやすい例は多々あります。

それらを頭に置いた上で、目の前の患者様のお姿から何を読み取るのか。

そこを蔑ろ(ないがしろ)にしてしまった自分に腹が立って腹が立って仕方がありません。

・患者様を見ろ!

・感じた熱感を信じろ!(寝起きや歩いたりで、熱感を起こすようなねん挫が起きるワキャねぇだろ!このバカたれ!骨折があるからこそ、寝たり起きたりや歩く程度で腫れるんだよ!)

・「ここが痛い」じゃなく「この辺が痛い」というように痛みの場所が広いのは、骨折があった場所を守るために周囲が緊張している痛みだ!骨折がないことの証明じゃない!

・あまりにツラい患者様は、問診で正確なことが言えない可能性がある。というか、言えないくらいツラいかどうかは、お顔の表情や仕草(今回なら、座っている時のしんばり棒)から判断できるだろうが!

 

ですので、再び同じ過ちを犯さないためにも、以上の4点を、ここ「院長日記」に残しておきたいと思います。

「やらかした」事として。