「腰痛の85%は原因が分からない」
どこかで聞いたことがあるかも知れませんが、コレ、私にとっては
「算数のテスト、85%は答えが分からない」
と言っているのと同じに聞こえます。だって
「そりゃ、算数のテスト受けるのに英語の参考書で勉強したって・・・」
という話ですから。
逆に言うなら
「英語の参考書しか読んでなくても、15点くらいは取れるんじゃない?」
「その15点にしたって、たまたま答えが合っただけで、計算方法書かせたら全然デタラメかもよ」ということです。
「腰痛の85%は原因が分からない」の?
これは、
「色んな腰痛の患者様を診るなかでレントゲンやCTスキャンにMRIなどの画像検査をしたところ、患者様の訴えと画像での異常が見られる部分が一致しないのが85%もある(一致するのは15%しかない)」
ということでしょう。
じゃ、画像での異常と患者様の訴えが一致する残りの15%が果たして原因と結果としてしっかり関連しているのか?という問題が浮かんできます。
だって、85%も違うんですから。
もちろん「合っている」こともあるでしょうけど、「たまたま合ってる」という可能性も否定は出来ませんよね。
「異常」ってなぜ起きるんでしょう?
突然?
いやぁ、レントゲンなどに写る「異常」って、なにかしら「通常じゃない事」がそこに起こった結果じゃないでしょうか?
野球選手の手まめ。生で見たらビックリします。普通の人では考えられないくらい「異常」です。
お相撲さんのかかと。なんですか、アレ?あの分厚さ。聞くところによると、画鋲が刺さっていても2,3日気づかないなんてザラなんだそうです。
要するに、一般生活ではありえない負荷がかかり続けた結果、ああなったんです。
(自分の場合で恐縮ですが、学生時代のアメフトの練習で、前腕部分でダミーをバンバン叩く練習をし続けた結果、その部分だけ分厚くなっていましたから)
つまり、画像上での異常があるから痛いのではなく、
痛みを起こすような「通常じゃない事」がそこに起こっている(起こり続けた)結果として、画像を見たら「異常」が起きているということです。
骨棘、異常です。
なんで、こんな事になるのでしょう?
椎間板ヘルニア、異常です。
何故、椎間板ははみ出したのでしょう?
OA(変形性膝関節症)、異常です。
お膝は急に変形しちゃったのでしょうか?お膝を変形させるウイルスに感染したのでしょうか?
レントゲンなどに写る異常は「痛みの原因」ではなく、「通常じゃない事」が起こした「結果の一つ」・・・いや、それすら関係ないのかも知れません、というのが私の考えです。
だからこそ、85%もの確率で腰痛の画像診断は一致しないんです。
「通常じゃない事」が起こした結果が「痛み」だとするなら、その「通常じゃない事」に耐え続けてきたのって何?というと、答えは簡単です。
筋肉です。
言うまでもありませんが、筋肉はそれ単体で働きません。腱や靭帯や骨があってこそ頑張れます。そういう意味で、筋肉や靭帯や腱などの骨に引っ付いているモノ(軟部組織と言ったりします)と言った方が正確でしょう。
軟部組織に引っ張られ続けた骨は?骨と骨をつなぐに筋肉が固くなって、ずっと圧迫され続けた椎間板は?普通のままでいられるでしょうか?
分厚くなったり、棘(とげ)みたいになったり、はみ出したりしないでしょうか?
「通常じゃない事」に筋肉が耐え続け、その結果として腱、靭帯、そして骨に「異常」が生じるのです。だから、痛みの場所と画像に写る異常の場所が一致しない、と。
ただ、その「異常」が痛みなどの症状を起こしている事もあるのでしょう。それを否定するつもりはないんです。だって、手術で良くなる方は確かにいらっしゃるんですから。
ですから、アナタの症状の原因がその「異常」なら、私には何も出来ません。
だって、手技や電気治療で骨棘を無くしたり、ヘルニアを元に戻したり、変形したお膝を真っ直ぐにすることは出来ませんから。
♪ 小さな窓から見える ♪
基本、レントゲンで筋肉は見えません。
「じゃ、MRIがあるじゃない」
確かにMRIなら筋肉は見えます。
けど、「そこに筋肉がある」というのは見えますが、「じゃ、その筋肉がどういう状態なのか?」は分かりません。MRIの画像には書いていないし、教えてくれないんです。
そこに筋肉があるのは分かりますが、筋肉がどういう状態なのかは分かりません。
(もちろん、発達しているとか、委縮しているは分かりますけどね)
松山千春さんの「窓」の一節です。
♪ 空の青さは分かるけど 空の広さが分からない ♪
ってヤツです。ですので自分は、間違えても、歌い出しの
♪ 小さな窓から見える この世界がぼくの全て ♪
になってはいけないと考えています。だって
「算数のテスト受けるのに英語の参考書で勉強したって・・・」
15点しか取れないでしょ?
「痛みの原因を見つけたいのに、画像だけに頼ってたって・・・」
って思いません?
そんな気持ちで日々取り患者様の痛みに組んでおります。