18歳のお嬢さんが腰痛だという事で、一緒に来られていたお母さんのお言葉です。
こういうの聞くと燃えるんですよ。で
「マリちゃん(仮名)、普段どんな座り方してるの?」
「えっと・・・」
と座ったのが
です。
「で、腰のどの辺が痛む?」
「えぇ・・・?この辺ン・・・?」
と触ったのが、腰の左辺り。
「(ほぉほぉ、来た来た)この辺ね。じゃね、仰向けで寝てみようか(多分、この辺がツラく感じるんちゃうかな?)」
「はい・・・あ、痛っ」
「おっ、痛かった?どの辺?」
「はい、やっぱ、ここです」
「(よっしゃー!来た来た)OK、OK。じゃ、〇〇してみよっか?」
「はい・・・アレ?痛くない」
「よね(^^)。とすると、コレ使ってみようか・・・どう?」
「うわっ、全然痛くない」
「痛くない?大丈夫?じゃ、もいっぺん座ってみよっか」
「はい」
「でね、じゃ、今度は逆の横坐りしてみよっか・・・多分、出来んと思・・・」
「イタタタ、無理です」
「あ、もうええよ。ゴメンゴメン。OK、OK。やっぱ、ここ(腰の左)が痛い?」
「はい」
ここまで、キツネにつままれた状態のお母さん。
「お母さん、マユちゃんは、座り方が悪いから腰が痛いんじゃなくて、こういう座り方が楽な体の状態、特に筋肉の状態だから、腰痛が治らないんですよ」
テレビや巷の情報誌やYouTube動画では、「座り方が悪いと腰痛や肩こりになる」という話があふれかえっています。
もちろん、全否定はしません。
というのも、「ついつい悪い座り方になっちゃうような体の状態のまま放っておくと、腰痛や肩こりが治らなかったり悪化したりする」とは思っているからです。
何言ってるか分かりません?
ですよね。結構マニアックな話かもしれません。ただ、同業者で「キョトン」としてる人は、もう一度教科書読み直す必要がありますね。
結論から言うと、彼女(マユちゃん)の場合、腰痛の最大の原因は「固くなった腸腰筋」です。
腸腰筋は腸骨筋と大腰筋という二つの筋肉を合わせた呼び名なのですが、これらの筋肉は背骨の腰の部分から骨盤の内側と太ももの骨の根元をつないでいます。
上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉で、寝ている時以外は常に上半身の重さを支えて頑張っています。(言葉の定義はハッキリしていませんが)いわゆるインナーマッスルの代表的なものの一つです。
大雑把に言うと、筋肉の働きは「どこかの骨とどこかの骨をつないで、収縮する(頑張る)ことでその距離を縮める」ということです。
力こぶ筋(上腕二頭筋)は肘を曲げる(上腕と前腕を近づける)、太もも裏側の筋(ハムストリングス)は膝を折りたたむ、といった具合です。
さて、腸腰筋です。腰骨と太ももの根元をつないでいますから、頑張ると体を折りたたもうとします。専門用語で言う「股関節の屈曲」です。
ただ、問題は太ももの骨のどこについているのか、です。
これまた専門用語で恐縮ですが、「大腿骨小転子」というところについています。太ももの根元なのですが、内側のやや後ろ側にある“ちょっとコンモリした場所”です。
とすると、腸腰筋は「股関節を屈曲させながら、太ももの裏側を前に引っ張って来るように」縮みます。座った状態を考えると、「膝をそろえた体育座り」ではなく「あぐらをかく」ような状態です。膝を外に開くように縮みます。専門用語で言う「大腿骨の外旋」です。
マユちゃんの膝を左にした横坐りは、左脚があぐらをかく方向に腸腰筋が縮んでいるからこそなんです。それが証拠に逆は痛くて出来ません。膝を右にした横坐りでは、左脚はあぐらと逆方向です。ですから、腸腰筋とすると逆に捻じられ引っ張られるような状態になりますから、腰の左側に痛みが起きたんです。
寝姿に、多くの情報が
その前段階として、仰向けに寝てもらいました。
坐った状態から仰向けになるというのは、体を横から見たとすると、腸腰筋的には「折りたたんだ状態から真っ直ぐに伸ばされる」動作です。
ガラケーの蝶つがいの所を想像してみて下さい。
錆びついていたら「ギシギシギシギシ・・・」、無理に真っ直ぐにしようとすると、腰の部分が反り返ります。反り返った部分では当然痛みが起こります。
じゃ、てことで、その反り返りえを解消するなら、そうです「膝を立てる」んです。
膝を立てる=股関節を屈曲させる=腸腰筋の緊張を緩める・・・から、腰の痛みが軽減します。
ただ、これだけでは、膝がガバっと開かないようにするため、股関節の筋肉はまだ少し緊張していますから、膝の下に台(三角枕)を置いて、脚をそこに乗っけてもらいます。
ついでに、お行儀が悪いですが、膝を少し開きます。
太ももの重さが三角枕に乗っかり、股関節の筋肉の緊張はさらに解けますので、先ほど感じた腰の痛みは一気に消失する。といったメカニズムです。
お母さんには申し訳ないですが、マリちゃんの腰痛は
「横坐りするから腰が痛い」のではなく、「ついつい膝を左にする横坐りをしてしまうくらい、左の腸腰筋が固くなっているから腰が痛い」ということです。
「横坐りをやめなさい!」とお母さんが言って、マリちゃんがその言いつけを守ったとしても、腸腰筋が固いままだと腰痛は治りません。
気が付いたらクセで横坐りしていたとしても、それがあくまでクセで、腸腰筋が柔らかい状態であれあば少々のことで腰痛は起こりませんが、気が付いたら横坐りしないとツラくなるような腸腰筋の状態であれば少々のことで腰痛は起こります。
仰向け寝のように、足を伸ばした状態(≒股関節屈曲じゃない状態)もツラい人も腸腰筋が怪しいですよ。
大事なのは「♪どんな時もぉ♪」じゃなく、「♪どんな時にぃ♪」です
マリちゃん、どんな時に痛くなるかといいうと
一つは「ずっと座っていると」で、もう一つは「イスから立ち上がる時」で、ヒドイ時は寝返りで痛い、とのこと。
「ずっと坐っている」というのは、「上半身という太い棒の重さを腸腰筋が支えて頑張っている」状態ですから、固くなっている腸腰筋はすぐに疲れて「上半身を支えるのがツラくなる」んです。肘を曲げたまま重いカバンを持ち続けたら、力こぶがパンパンになってしまうのと同じです。同じ事が腰(腸腰筋)でも起こっているため痛むんです。
二つ目の「イスから立ち上がる時」にしても、「しばらく座っていた後立ち上がると」とのこと。
力こぶで言うと、パンパンに張った状態で急に肘を伸ばされたら「痛テテテ」となりますよね。腸腰筋で言うと、「縮んだ状態で頑張って固くなった状態から、上半身の重さを支えながら急に引き伸ばされる」形になります。
「痛テテテ」としばらく前かがみが続きますが、次第に真っ直ぐ立てるようになり、痛みが無くなります。
まるで、人類の進化を見ているような感じです。
「立ち上がりや動き始めはツラいけど、動いているうちに楽になる」というのは、まさに筋肉が起こす痛みの特徴です。
動いている=筋肉が伸び縮みする=血行がよくなる=筋肉が仕事をしやすくなる
という具合です。
となると、こうも言えます。
たとえ「いい姿勢」だとしても、いい姿勢でずっと座っていると腰痛は起こります。
え!そんなぁ。みんな言ってますよ。痛みがあるのは姿勢が悪いから。姿勢が悪いのは、その土台の骨盤が歪んで背骨が歪んでいるからだって。だから、骨盤を矯正しましょうって。
確かに、腸腰筋の固さの左右のアンバランスで「骨盤がどちらかに傾いて【見える】」ことはあるでしょう。腸腰筋が縮んでいることで「骨盤が前に傾いて【見える】」ことがあるでしょう。けど、それらは結果としてそう【見えている】んです。原因ではなく、あくまでも結果の一つです。改善しなくていけないのは「腰痛」であって、その原因が固くなった腸腰筋です。
腸腰筋が固くなった【目に見える結果の一つ】の「骨盤の傾き」を矯正?
自分には、一体何を言っているのか分かりません。
青いリトマス試験紙を赤く塗ったところで、その液体がアルカリ性なのは変わりません。
骨盤の見た目を変えたとして(そう簡単に変えられないと考えていますが)、腰痛が改善すると思います?
「結果の一つを変えれば、原因が変わる」?んなワキャないでしょ(TT)
分かりました。百歩譲りましょう。何かしらの方法で「良い姿勢」になったとしましょう。
「いい姿勢」は色んな所に負担が起こりにくい「姿勢」のことを指すと思いますが、そのままジッとしていると、筋肉はその「いい姿勢」を維持するためにずっと頑張り続けます。
筋肉はジッとしていると血行が悪くなります。
「朝一番がツラいけど、なんやかんやしてると楽になる」のがいい例です。
藤原〇香さんだって、菜〇緒さんだって、人に見られていない時はダラーっとしてるはずです。一年中「いい姿勢」でいたらドエライ疲れますから。
さて、問題は、マリちゃんは何故こんなに左の腸腰筋が固くなったのか。
「あぁ、なるほど。それは大変やったね」という物語が控えているのですが、これは、また長くなりますので、機会を改めてと思います。