O脚について

患者様とのお話でO脚についての話になったので、改めて自分の頭を整理する上で一つ書かせていただきます。(ちょいと、長くなります^^;)

 

ふと見かけた

「猫背改善アカデミーby 猫背改善専門スタジオ『きゃっとばっく』」さんのサイト

https://catback4h.com/content/introducing-ways-to-check-and-improve-bow-legs-below-the-knee

あぁ、そういや今治でやっていた17年の間で一時期「O脚改善メニュー」というのをやってたなぁ、と思い出しました。

その中にあった絵を拝借します。非常に素晴らしい絵ですし考察でらっしゃいますので、是非みなさん上記のサイトを訪れてみて下さい。

太ももの骨(大腿骨といいます)が本来あるべき最も負荷がかからない姿(解剖学的肢位といいます)よりも内側にねじれて(内旋といいます)、膝から下が外にねじれて(外旋といいます)いる状態を、ここのサイトでは「膝下O脚」と読んでらっしゃるようですね。

自分も概ね賛同します。

巷でよくあるじゃないですか?

「O脚になるのは内転筋(両太ももの骨を内側に閉じる筋肉)が弱いから」

だとして、

「O脚改善のポイントは内転筋を強化することだー!」

と解説する本や動画。

 

こういうの見たことありませんか?

 

「内転筋が弱いから大腿骨が外に開いてO脚になる」

ただ、正直なところ自分とすると

「・・・ま、まぁ、そういうこともあるのかも知れませんね」

「けど、それってあまりに単純じゃ、あぁりませんか?」とも思います。

挙句の果てに

こんなのまで売っています。売っているってことは買っている人もいる、と。

いや、いいんです。いいんですよ。欲しい人がお金を出してくれるから売れるし、その人が望むモノを売るのがビジネスですから。

 

ただ、果たして、どうなんでしょう。

 

ひねくれ者の自分は、何故O脚になるの?ということから話を始めないと気が済まないんです。その、あなたのO脚の原因は何なの?と。

 

「内転筋が弱った」

分かりました。弱ったとしましょう。じゃ、何故弱ったの?

その人は脚をひらいたまま(内転筋が閉じる力を発揮しないまま)ずーっと生活をして来られたってこと?だから、弱った、と。

そんな人いますぅ?

「けど、脚を閉じる意識なんてのも、ほとんどしたことないよ」

というお声もあるでしょう。

けど、どうでしょう?例えば歩く時。

右脚を前に出して地面に足がつきました。次はどうします?そうです。

左脚を前に出しますよね。

その時って右脚だけで全体重支えていません?でしょ?

前に振り出した右脚で体重を支えながら、その状態で左脚を右足をついている所よりも前に持ってきます。左足が地面に着くまでの間、右の太ももをギュッと内側に閉じるようにしていないと体が崩れませんか?

赤の矢印の働きをするのが内転筋群です。

上の絵のように、人の太ももの骨ってのいうは、股の下からじゃなく骨盤の外側から始まっていますからね。

どんな人でも、歩いている時は内転筋も働いているんです。

お気づきかと思いますが、逆の足が宙に浮いている時間が長ければ長いほど、内転筋が頑張る時間が長いですよね。言い換えると、大きなストライドで歩く人ほど内転筋は長い時間頑張っていることになるので理論上は必ず強化されます。

ですから、「内転筋が弱っている人」というのは、よほど歩かない人なのかも知れません。

しかも、その「よほど」は想像を絶するくらい「よほど」です。長い間、毎日ジー――っとしているか、移動はほとんど車かスクーター的なものか、という人です。

 

けどね、ちょっと考えて下さい。

おじいちゃんおばあちゃんでO脚の人いません?

なんなら多くありませんか?

おじいちゃんおばあちゃんて昔(若い頃)毎日ジーーーーっとしてらっしゃいました?車やスクーターで移動してました?

何なら、畑や田んぼ、もしくは肉体労働で毎日毎日動き回っていませんでしたか?

そんなおじいちゃんおばあちゃんの内転筋が弱いからO脚になった?

自分は考えられないんです。じゃぁ、何故?

 

ということで、最初の「猫背改善アカデミーby 猫背改善専門スタジオ『きゃっとばっく』」さんの絵に戻ります。

大腿骨が内旋することが原因で起こる、と。

じゃ、何故その大腿骨が内旋するのか?

でしょ。ここからは大胆仮説です。けど、何気に自信があります。エッヘン。

 

歩く時に働く筋肉を考えましょう。色んな意見があると思います。それこそ、理学療法士さんらは血眼になって研究されているでしょうから、これから書くことは、そういう人達からすると的はずれかも知れません。ただ、少しお付き合いください。

(ですので、専門的な用語が多く出てきます)

 

股関節を構成する筋肉は様々あります。

ざっくり挙げると、腸腰筋(股関節前面深部)、でん筋(股関節後面:お尻)、大腿四頭筋(大腿前面)、ハムストリングス(大腿後面)、それと内転筋群(大腿内面)です。あと、目立ちませんが大腿筋膜張筋(股関節外側)と。

 

このうち、股関節の前後にある大きな筋肉の腸腰筋やでん筋はどちらも股関節を外旋させる機能があります。太ももの骨を外にねじる作用です。もう少し平たく言えば、膝のお皿を外に向けて足を振り出す、いわゆるヤンキー歩き・がに股歩きの方向です。

何なら、骨の構造上、大腿四頭筋が働く時(脚を前に出す時)も、大腿骨は体の中心(股の下)から外に開こうとしちゃいます。

けど、どうです?これじゃ、思ったように前に進めません。遅刻しそうになった時に、こんな悠長な歩き方はしてられませんよね。

とすると、股関節を外旋させる反対に働く筋肉が頑張る必要が出てきます。

 

股関節の内旋筋です。

 

ハムストリングスの中にも股関節を内旋させる働きをする筋肉はありますが、ハムストリングスは脚を(大腿骨を)後ろに蹴るような動作で働きますので、脚を前にすすめる時には役に立ちません。そこで大きな役目を果たすのが、目立たないけど名前は大仰な

大腿筋膜張筋

何かの必殺技みたいな名前ですね

です。

 

大腿筋膜張筋の働きは、股関節の屈曲、内旋、外転です。

股関節を曲げて、太ももを内側にねじって、外に開く

・・・ざっくり言うとこんなイメージです。

いわゆる「女の子座り」です。

 

「はぁ?こん事しないと歩けないの?俺、したことないぞ!」

とおっしゃられるでしょう。私も出来ません。

 

けど、こういう風に働く筋肉が歩く時には重要な役目をしています。

 

先ず、もう一度。

股関節の前後にある腸腰筋・でん筋に加え太もも前面にある大腿四頭筋は概して太ももを外にねじったり、脚を外に向ける働きがあります。脚を前に出す時に頑張る腸腰筋・大腿四頭筋が頑張るとまさにそれ。

その時に大腿筋膜張筋の「股関節の屈曲・内旋」が効いてくるんです。

股関節の屈曲=脚を前に出す

股関節の内旋=太ももを内側にねじる

じゃ、外転は?脚、外に開いてないじゃん!」

 

まぁまぁ、ちょっと待って。次の絵、見たことありません?

お尻にある中でん筋などの股関節を外転する筋肉が弱ると、歩行時などの片足立ちになる瞬間に体が“くの字”に折る曲がっちゃうアレ。

大腿筋膜張筋は、地面に足が着地するまでは「股関節を屈曲・内旋」させて、着地して後ろの足が自分を追い越して地面に着地するまでの間は、中でん筋達と一緒に体を真っ直ぐに(九の字に折れ曲がらないように)支えている=股関節の外転筋として頑張っているんです。

 

とすると、歩く時のストライドが長ければ長いほど大腿筋膜張筋はしっかり働きますが、その時間が短ければ短いほど働かなくなります。

ストライドが短い歩き方?

さっきのヤンキーもそうでしょうけど、おじいちゃんおばあちゃんがヤンキー歩きしてたか?っていうと、NOでしょ。とすると、

とか

とか。

 

ね。ストライドを大きくどころか

脚をひらいて地面に踏ん張って、

短いストライドで歩くお仕事をずーーーっと頑張って来られたのではありませんか?

スポーツなら頑張った後でストレッチやマッサージをするでしょう。けど、お仕事だと?

多分、そのままですよね。

頑張った筋肉を放っておくと固くなります。固くなると伸び縮みしづらくなり、さらにそれが進むと縮みます。

大腿筋膜張筋が縮むと股関節が屈曲し内旋します。まさに

の絵のまんまです。おまけに大腿骨が外に開こうとするので、膝の部分では

膝の内側に圧がかかり続けてしまうせいで、見た目のO脚どころか、本当に膝の関節が変形してしまう「変形性膝関節症」が起きてしまいます。

 

歩くという動作は、もちろん健康のためにも大切なことですが、こういう点でも大事なことなんです。特に大きなストライドで歩くというのは、股関節にある多くの筋肉が大きく頑張る動作です。

 

「じゃ、それらの筋肉を鍛えなくちゃいけないの?」

というお声もあるでしょう。

ココからは、その方のO脚や変形、日常生活の過ごし方等様々な要因を考えていかないと、おいそれと改善には導けないのではないかと言うのが、私の現在の考えです。

 

ただ、これも誤解を恐れず言うなら、お膝を構成する骨が変形してないO脚ならば、

筋力強化よりも、

それを引き起こしている固くなっている筋肉の柔軟性を回復させることの方が有効ではないかと思っています。

柔軟性=伸び縮みのしやすさ

です。

 

逆に、本来ここまでは筋肉が伸び縮みして欲しいのにそれが出来ないために起きた目に見える“しわ寄せ”の一つがO脚だと思うからです。

おじいちゃんおばあちゃんの畑仕事では、お尻の筋肉に大きな動きが無く、その状態でずーーーーっと頑張ってますよね。

重いカバンを持ったまま、ずーーーっと肘を曲げてたら、腕(力こぶ=上腕二頭筋)はどうなりますか?パンパンに張りますよね。カチカチになるでしょ?そのまま放っておくと?そう、固くなって伸び縮みしにくくなります。

「じゃ、『きゃっとばっく』さんの言う『膝下O脚』はどうすんのさ?」

え?答え要ります?

じゃぁ、まず仰向けに寝てみて下さい。

で、軽く足の間をひらいて。そうですね、膝の間に握りこぶしが一つ入るくらいに。

で、太ももを内側にねじって下さい。

そう、つま先が近づきますよね。

じゃ、次は両ひざを揃えてから太ももを内側にねじってみて下さい。

つま先がぶつかるから、それ以上ねじれませんでしょ?

勝手に、膝から下の骨が外にねじられちゃってるんです。

ていうか、「外にねじるようにならないと、太ももが内側にねじれない」んです。

 

膝から下の骨を外にねじることを「下腿の外旋」といいます。

「じゃ、逆に下腿の内旋筋を鍛えればいいんだ!」

え?あ、まぁ、お好きにどうぞ^^;

 

自分は先ず、そういう状態にしてしまっただろう「固くなった下腿の外旋筋」を柔らかくすることを考えますけどね。先ずは、大腿二頭筋かな?

兎にも角にも、人の身体の変形(?)には物語があります。その物語をさかのぼるような事が出来れば、その前提で、物語を考えることが出来れば変形の改善に近づくと思いますよ。

内転筋や内旋筋を鍛えたり、矯正ベルト使ってもかまいませんが、下の絵みたいにならないように気をつけてくださいね。