いやぁ、参った。というか、ビックリしました。
体育座り禁止の学校が増えているとのこと。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220511/k10013620251000.html
で、原因読んで愕然。
体育座りで腰痛になるから???
勉強に集中できないくらいの腰痛の原因が、学校での体育座り???
だから、学校で体育座りをやめれば、子供の腰痛は無くなる???
大前提を申し上げます。
今回の院長日記で
「体育座りは身体にいいからガンガンしなさい!」
などと言うつもりはありません。
むしろ、指摘の通り体育座りは身体に良くありません。
腰がツラくなります。
ただし、長時間の体育座りは、です。
極端な話、体育の授業中ず―――――――っと体育座りしてたら、オリンピック選手だって腰痛になります。
ここに二つのキーワードがあります。
一つは「腰痛」、も一つは「長時間」です。
これら二つのワードの意味合いを厳密に定めていないと、今回の院長日記はグダグダになってしまいます。
あ、これまた厳密に言えば、【いつも以上に】グダグダになってしまいます、です。
論点整理しまっしょ。
腰痛、腰痛って言うけどさぁ^^;
先ずは「腰痛」。
ごちゃ混ぜにしてはならないのが
1)その子が将来苦しむこと(持病)になるほどの腰痛
と
2)体育座りをしてるとツラくなる程度の腰痛
ということの二つです。
2)をもちっと詳しく書くなら、
体育座りをしてるとツラくなるけど、終わって何だかんだしているとツラサを忘れる程度の腰痛
という二つの話をごちゃ混ぜにしていないか?です。
昭和40年(1965年)生まれの私は、ドップリ体育座り世代です。
体育の授業、運動会の予行演習、何かの競技大会・・・事あるごとに体育座りをしてきました。先生や体育委員、何かの大会委員長や来賓や、前で誰かが話している間は体育座り。(もちろん、立っていることもありましたよ)
先ずはケツ(坐骨結節といいます)が痛いんです。
そりゃそうです。座布団も何もない固い床や地面にお尻の骨の尖った部分がずーーーっと当たってるんですから。
で、次に腰です。
ただし、体育座り自体は問題じゃないんです。誰だって出来る体勢です。
問題は、前のオッちゃんの話が長い時です。
何故?
下の図は解剖学的肢位といって、(理論上の話ですが)余計な筋力を必要とせず、なおかつ骨と骨が構造上最も正しい位置関係にあり、そのため内臓や神経などが正常に働く身体のポジションだと言われています。
「ガイコツのプラモデルがあったとして、作り方の図面がなくても、骨と骨を並べていくと自然とこうなる完成形」と言ってもいいかも。
背骨は腰の辺りで緩やかに前カーブを描いてますね。それと、見逃してはいけないのは直立しているということ。
ピノキオを想像するまでもなく、人形はそのままでは自分では立てません。
グシャっとつぶれます。
つぶれないで立つ、立っているためには筋力が必要です。
筋肉は力を発揮する時にギュッと縮みます。
解剖学的肢位を保つためには、保つために縮み続けている筋肉があるんです。
先ほど「(理論上の話ですが)」とお断わりを一言入れた理由がこれです。
背骨が腰の辺りで緩やかに前カーブを描くために縮む(頑張る)筋肉や、直立している時に縮む(頑張る)筋肉があるんです。
・背筋を立ててが腰の辺りで緩やかに前カーブを描くために縮む(頑張る)筋肉
(ここでは詳しく触れませんが、腸腰筋や腰方形筋も大きな役割をしています)
・直立している時に縮む(頑張る)お尻の筋肉
もちろん、他にも脚や首回りの筋肉もですが、今回の院長日記のテーマは「体育座りと腰痛」です。これらの筋肉が「体育座りと腰痛」の大きなポイントです。
解剖学的肢位でいる時に縮むこれらの筋肉、体育座りの時にはどうなっているでしょうか?
そうです、伸ばされているんです。伸ばされ続けているんです。
筋肉は縮む時に固くなりますが、伸ばされても固くなります。
ゴムを引っ張ると張力で固くなりますよね。アレと同じことが体育座りで起こっているんです。
(筋肉と筋紡錘、Aα線維やAɤ線維に伸張反射、色々書きたいのですが、あまりにマニアックになりますので、ここでは省きますね)
解剖学的肢位・・・あぁ、メンドクサイ(以下「直立」にします)!
直立するときに縮む筋肉が一転、体育座りでは引っ張られます。
引っ張られ続けた筋肉は固くなります。
固くなった筋肉は内の圧力が高まり、血行が悪くなり、痛みを生じます。
ただし、ここでの「痛み」は決して慢性腰痛ではありません。あくまでも一過性です。
その子が将来にわたって腰痛で悩まなくてはならない持病になるわけではありません。
上述の
2)体育座りをしてると腰がツラくなる
というレベルの「痛み」です。
つまり、体育座りをしてると腰がツラくなるけど、終わって何だかんだしていると腰のツラサを忘れるレベルの「痛み」です。
固くなった筋肉が起こしている腰痛です。
たとえオリンピック選手でも、ジッとしていれば筋肉は固くなります。
それが、解剖学的肢位を真っ向から否定するような体育座りならなおさらです。
上で、
体育の授業中ず―――――――っと体育座りしてたら、オリンピック選手だって腰痛になります。
というのは、そういうことです。
固くなった筋肉は、その人の限界以上に引っ張られると
「あーーーっ!それ以上伸ばされると切れちゃうーーーっ!」
「伸ばされて固くなってる筋肉は血行が悪いからツラいわぁ」
という痛みを生じますが、その人の限界以上に縮められても
「おいっ!それ以上縮めると苦しいよ」
という痛みを起こします。
もちろん、筋肉の伸張・短縮の限度(筋肉の柔軟性)には個人差があります。
生まれながらのものもあるでしょうが、日常生活での身体の使い方が最も大きな影響があることは容易に想像がつくでしょう。
常日頃身体を動かす機会がある子は筋肉の柔軟性が高く、いつも勉強頑張って(それよりもゲームやテレビやネットで)ジッとしている時間が長い子の柔軟性は低いでしょう。
柔軟性を「筋肉が伸び縮みする遊び」と言い換えてもいいかも知れません。
「遊び」が多い筋肉は柔らかいし血行が良い。
「柔らかい=伸び縮みの遊びが多い」から固くなりにくい(痛くなりにくい)し、たとえ固くなっても、「遊び」が多い分血行が回復しやすい(痛みをすぐ忘れる)。
「遊び」が少ない筋肉は固いし血行が良くない。
「固い=伸び縮みの遊びが少ない」から固くなりやすい(痛くなりやすい)し、一度固くなると、「遊び」が少ない分血行が改善しにくい(なかなか治らない)。
私の中では、前者は田植え直前の田んぼで、後者はカチカチの荒れ地なのか?みたいなイメージです。
筋肉の伸張・短縮の限度(筋肉の柔軟性「遊び」)には個人差があるように、固くなるまでの時間も個人差があります。「遊び」が多い子は固くなりにくいし、「遊び」が少ない子は固くなりやすいでしょう。
さて、学校生活です。
昭和40年代よりも体育座りの時間が長くなってるでしょうか?
授業時間が長くなってますでしょうか?
体育座りよりはマシですが、イスに座りっぱなしも筋肉にとっては負担がかかります。
長くなっているのは、学校以外でジッとしている時間ではありませんか?
それって勉強ですか?なら、日本の子供たちの学力が先進国でこんなことになってますでしょうか?
http://www.worldcareer.jp/ranking/detail/id=73
勉強以外(ゲームやネット)ではありませんか?
そこに、先生の目が届きますか?先生にそこまで責任持たせるんですか?誰の責任なんですか?
体育座りは腰痛になるから学校での体育座り禁止!
授業中、腰痛で座ってられない子供が増えてる?
それって、学校での体育座りが問題なんですか?
学校での体育座り程度で、腰痛を起こし、長引かせてしまい、勉強してても腰が痛くなるくらい、その子の筋肉に「遊び」が無くなっちゃってるんじゃないですか?
それって誰の責任なんですか?
大事なことなのでもう一度申し上げます。
今回の院長日記で
「体育座りは身体にいいからガンガンしなさい!」
などと言うつもりはありません。
むしろ、体育座りは身体に良くありません。
腰がツラくなります。
けど、体育座り程度で、その子が将来苦しむこと(持病)になるほどの腰痛に???
勉強に集中できないくらいの腰痛の原因が、学校での体育座り???
学校で体育座りをやめれば、子供の腰痛は無くなる???
それって、
お医者様に「あぁ、あなたの貧血は鉄分が足りないからですね」
と言われて
「よし!鉄工所行って鉄もらって来て、今夜から晩ご飯に一品加えよう」
というのと同じくらい愚かなことではありませんか?
赤色のリトマス試験紙を青色に塗って水に浸したからといって、その水がアルカリ性になるんですか?
そーゆーことだと私は考えます。