「痛い」って何?
これって究極の課題です。
「痛みの考え方」という本を元にすると、
発痛物質や温度の変化や神経の牽引や圧迫(これらを「侵害刺激」と呼びます)が神経の周囲で起こり
→ 脱分極が起こり、
→ それが大脳皮質体性感覚野や大脳辺縁系に伝わることで
→ 「痛い」と感じるとのこと。
これは「普段経験する痛み」で「侵害受容性疼痛」といいます。
一方で、侵害刺激がないのに神経そのものが障害を受けているために起こるものもあるとのこと。これは「経験したことのない、普通でない痛み」で「神経障害性疼痛」、いわゆる「神経痛」というとのことです。
ただ、思うんです。特に上の「侵害受容性疼痛」で特に。
侵害刺激には何があるかと言うと
・引っ張る・圧迫する・刺す・切る・叩く・火・氷・化学物質・虚血
なんだそうです。ここで「ん?」ってなりません?
虚血というのは要するに「酸欠状態」を言うそうですが、その「痛み」と「刺す、切る、叩く、火傷」の「痛み」って同じなの、と。
身近に感じる「酸欠」というと、いわゆる「肩こり」じゃないでしょうか?
固くなった筋肉に酸素や栄養が十分いきわたらないで起きる「痛み」。もちろん「痛い」でしょうけど、これが「ナイフで刺された痛み」と同じ?
日本語では「痛い」という言葉で一括りにされますが、その中身は違ったものじゃありませんか?
「肩こり」の「痛い」は「ナイフで刺されて痛い」の「痛い」より、「ツラい、重い、キツイ」というニュアンスが強くないでしょうか?
例えば五十肩の症状で「腕を上げると痛い」というのがありますが、それにも色んな種類の「痛い」がありませんか?
・痛くて腕を上げられない
・腕を上げようとすると痛い
・腕が上がらなくはないけど、これ以上は痛くて上げられない
・腕が上がらなくはないけど、上げると違和感がある
・腕が上がらなくはないけど、ここからこの範囲が痛い
などです。さらに、その際に問題になるのは「どこが?」という点です。
ピンポイントで「ココ!」という場合もあれば、「この辺りが・・・」というケースも。
けど、病院に行くと「ロキソニンで様子を見てください」と言われます。
ロキソニンは非ステロイド性抗炎症薬という薬品です。
ステロイド性じゃなく、炎症を抑える成分ですよ、ということです。
で、ここでややこしいのが「炎症を抑える」???
一般的な「炎症」のイメージって、「腫れてて熱感があって赤くなってる状態」じゃないでしょうか?
言い換えると、「ねん挫や打ち身したみたいになってる状態」かと。
ただ、ただですよ、「肩こり」でツラい所って「ねん挫や打ち身したみたいに」なってます?
腫れても無いし、熱感も無い。もちろん赤くなんてなっていません。
じゃ、肩こりに炎症を抑えるロキソニンって何故に?
ということで「炎症」とは何ぞや?と調べてみると、「炎症には四つの徴候がある」と。
ふむふむ。じゃ、それはというと
「疼痛、発熱、発赤、腫脹」だとのこと。
??????
「痛い」ところに「炎症を抑えるロキソニン」。で、その「炎症」の特徴って何というと「疼痛、発熱、発赤、腫脹」・・・「痛い」を構成する要件の「炎症」って何?と思ったら、その中にも「疼痛(痛み)」が含まれる
??????
例えばですよ、「中間テストの成績を良くしたい」と思ったら、
「中間テストの科目の勉強をして点数を上げる」ことが前提ですよね。
なのに、「その科目は何ですか?」という問いに対しての先生の答えが「それはな、国語と算数と理科と社会と体育と音楽と中間テストだよ」と言われてるみたいなもんじゃないですか?
言いたくなりませんか?
「だぁかぁらぁ、その中間テストの点数を上げたいっちゅうてんねん!」って。
患者さん「痛いから何とかして欲しい。痛みを(構成する要件を)無くす薬を処方して下さい」
先生「痛みがある処では炎症が起きているから、炎症を抑える薬を処方しましょう」
患者さん「先生、その痛みがある(炎症がある)所では何が起きているんですか?」
先生「熱があって、赤くなって、腫れてて、痛みがあるんだよ」
患者さん「痛みと発熱と赤くなって腫れているから痛いってことですか?それって、『頭が痛いから頭痛がしている』と同じこと言ってません?頭痛の原因をやっつけるから頭痛薬なのに、その原因が頭痛て・・・」
先生は小泉〇次郎さんですか?
わけのわからない禅問答みたいじゃないですか?
じゃ、「痛い」って何?となると、当院では一枚の資料を見てもらっています。
ひと言で「痛い」といっても色々あると思うんです。
しかも、たとえ患者様に説明してもらっても、患者様が感じている「痛い」と話をお聞きした自分が認識する「痛い」が同じとは限らないんです。
ただ、当院の図を使うと、極力その差が縮まると思うんです。
それを元に施術して、上手くいけば「やったぁ!」ですし、上手くいかなかったら「じゃぁ、なんで?」と考えていく。その積み重ねでしか、施術の精度は上がらないと思うんですよね。
ここでカレーライスです。
元々はインドのお料理ですが、言うまでもなく今やラーメンなどのように外来でありながらもはや日本の国民料理です。みんな大好きです。
けど、自分が感じているカレーライスの「美味しさ」と、目の前の人が感じているカレーライスの「美味しさ」って全く同じなの?という疑問わいたことありませんか?
辛口好きの人が感じる「美味しさ」もあれば、甘口好きな人の「美味しさ」も。
同じカレーでも、もしかしたら辛口好きの人は「(美味しいけど、もうちょっと辛い方がいいかな?)」と感じているかも知れません。甘口好きの人は逆に「(美味しいけど、もうちょっと甘くてもいいかな?)」と感じているのかも。
「痛み」にしても、その方個人の経験からくる感覚や我慢強さでも違うかも知れません。
佐々木朗希選手の球を打とうと頑張ってる選手からすると中学生の投げる球は遅くかんじるでしょう。甲子園に出るような高校生からするとプロの二軍選手の球はかすりもしないかも知れません。
「痛い」って深いんですよねぇ・・・それこそ、「幻肢痛」という痛みもあるんです。
なんらかのご病気やけがで、腕や脚を切断せざるを得なかった方なのですが、無いはずの足が痛くかんじたり、腕が痺れたりする症状です。
私も以前、糖尿病で右膝から下を切断された方が脚の痛みを訴えられているのを実際に体験しました。
当然ですが、ロキソニンは効きません。なんなら貼る場所がないんです。
「痛い」って深いんですよ
けど、だからこそやりがいがあるんです(と、最後はカッコよく決めさせて頂きました^^;)