さて、その「邪魔すんの誰やねん!」てことです。
今回の私のケースに戻ります。今回私に起きたぎっくり腰の原因は「気を付けー!」をする時に頑張る筋肉が固くなってしまったこと。その筋肉を治療したことで治ったことが一つの証拠です。
「背骨や骨盤がゆがんだ」「ヘルニアがあった」という人がいるかも知れませんし、もしかするとそうだったのかも知れません。
「そうじゃない証明は悪魔の証明」です。完全にその可能性を否定できませんが、今回一週もしないうちに痛みが無くなったのは、筋肉の治療をしたからです。
結果的に「背骨や骨盤のゆがみが直った」「ヘルニアがなくなった」のかもしれませんが、これも分かりません。
じゃ、どこを中心に治療したのかというと三か所あります。腰方形筋と腸腰筋と梨状筋です。
そのうち、「歩く」という動作に大きく関係したのが腸腰筋と梨状筋ではないかと考えています。(腰方形筋はまさに「気を付け」の姿勢を維持する筋肉ですので、固くなると前かがみを邪魔します)
先ずは腸腰筋
先ずは腸腰筋についてです。
膝を伸ばす大腿四頭筋に「頑張れ!」という命令を送る神経を「大腿神経」と呼びますが、この神経は背骨の横穴(椎間孔)を出て腸腰筋の間(腸骨筋と大腰筋に挟まれた間)を通って大腿四頭筋に到達します。腸腰筋は股関節を深く曲げる筋肉ではありますが、あぐらをかく方向(膝を外に広げて座る方向)に縮む筋肉ですので固くなると膝を胸につけるように深く曲げること(まさに靴下をはく動作)が困難になります。
腰方形筋のすぐ前にある筋肉ですので単独で固くなることはありませんから、ある程度固くなっていたと考えるのが妥当です。
腸腰筋は上半身と下半身をつなぐ唯一の、そして大きな筋肉です。
ということは「立つ」というのは腸腰筋が上半身の重さを支えながら伸ばされる動きですので、ギュッと固くなります。
私の場合、イスから立ち上がった時にはこんな感じ(左側)になっていました。
何歩か歩くと背筋は伸びてくるのですが、その最初の何歩かで脚に力が入りにくかったんです。つまり、固くなった腸腰筋(いい姿勢をしたくても腸腰筋が伸びてくれない状態です)がさらにギュッと固くなったことで大腿神経が圧迫され、大腿四頭筋に「膝を伸ばせ!」という命令が上手く伝わらなかったということなんです。
続いて梨状筋
次は梨状筋です。
この筋肉に「頑張れ!」という命令を送る神経も大切なのですが、この筋肉が固くなることで圧迫を受ける神経の方がポイントではないかと考えています。
梨状筋が固くなると、小殿筋や中殿筋に命令を送る「上殿神経」と大殿筋に命令を送る「下殿神経」が圧迫を受けます。これらの筋肉は全て「脚を後ろに振り上げろー!」の時に頑張る筋肉ですので、これらの神経が圧迫を受けるとお尻の筋肉が「気を付けー!」の姿勢をとれなかった、立った状態を維持することが出来なくなったということなんです。
一般的に神経痛は、「神経が圧迫を受けることで痛みが起きる」状態をいうのですが、もちろんそれもあるのでしょう。
ですが私は「神経は圧迫を受けると麻痺が起きる」もしくは「麻痺とまではいかなくても、上手く命令が伝わらず、筋肉に10頑張って欲しいのに5しか命令を伝えられなくなる」のではないかと考えています。
これもまた、上述の「骨盤、ヘルニア」議論に通じますが、「圧迫されても痛みは起きない」というつもりはありません。ただ、圧迫されれば麻痺や機能低下は起こります。
水道のゴムホースを踏んづけると水の勢いが弱まるように、神経は圧迫を受けることで命令が弱まると考えます。
一方で、神経は圧迫には強いとされています。
朝礼で長い時間立っていると、足の裏の神経はズー―っと圧迫を受けますが、だからといって足の裏が麻痺したりしませんし、イスに長い時間座っているからといってお尻から太もも裏の神経が麻痺したりはしません。
ただ、「立ち上がる」、「歩く」などの体重を支え固くなる筋肉の圧迫力は、通常よりもかなり強い圧迫力なのではないでしょうか?
ぎっくり腰を起こす原因になった固くなった筋肉が、「歩く」などでさらに力を発揮しようとする時にいくつかの神経を圧迫したことで、「歩く」動作で頑張らないといけない筋肉に対して命令が上手く伝わらなかったというのが、「ぎっくり腰で歩けない」ということにつながったと考えています。
脊柱管狭窄症の症状の一つ「間欠性跛行」も、もしかしたらこういう要素があるのでは?なんて言うとお医者様から叱られると思うのですが、当院の患者様でいらっしゃるのも事実なんです。
今回の私のぎっくり腰は、一つの発見と一つの再確認をする大きな経験となりました。
いや、ほんと。痛かったんです。
二度と嫌なので、(職権乱用して)定期的に楽トレで筋肉の柔軟性を維持していこうと改めて思いました(^^;