腰の動きについては曲げる・ひねる・反らすなどの表現があります。
じゃ、それぞれどのくらいの角度で動くのかな?と考えた時、実はほとんど動きはないんです。
「え?でも、新体操の選手なんてグイーンと反り返ったりするじゃん!」
そうなんです。そうなんですが、ここで注目して頂きたいのは「腰」の部分なんです。
「ん?」
ひっかけ問題みたいになってしまいましたが、腰を曲げる・ひねる・反らすというのは、身体全体として曲げる・ひねる・反らすということなんです。
「ん?ん?」
腰を曲げる?ひねる?反らす?
ちょっと解剖学の授業っぽくなりますよ。
背骨は一本の骨ではなくて、だるま落としの人形のようにたくさんの積み木が繋がって一本の棒のようになっています。
解剖学の難しい言い方で、背骨のことを「脊椎(せきつい、脊柱とも)」といい、積み木の事を「椎骨(ついこつ、椎体とも)」といいます。椎体と椎体の間にはクッション材のような板があり、それを「椎間板(ついかんばん)」と呼びます。
背骨(脊椎)を構成する積み木(椎骨)は全部で24個あり、便宜上の分け方として上から7個を首の部分、そこから下12個を胸、そこから下の5個を腰の部分に分類しています。
つまり背骨(脊椎)は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎(きょうつい)、5個の腰椎(ようつい)から出来ているんです。
さて、ここでお話したいのは腰椎です。先ほども書きましたように、実はほとんど動きません。
特にひねり動作などは、5個の腰椎が全部動いても左右に10度しか動かないんです。
とすると、腰を曲げる動作とは・・・そうです、身体全体を股関節を中心に折りたたむ動作になります。
お尻やももの裏側や背中の筋肉が伸びてはいますが、腰の腰椎の部分がグニャっと曲がっているのではありません。
「腰を曲げる」というのは「股関節を中心に身体全体を折りたたむ」ということで、スムーズに折りたたむためにはお尻や太ももの裏側や背中の筋肉が柔らかく伸びてくれる必要があるんです。
腰をひねるとは・・・これは、少し難しいですよ。
詳しくはまた別の項目でお話しますが、これまたお尻や背中の筋肉が柔らかく伸びてくれる必要があるんです。
そして、腰を反らすとは。
そうです。腰を曲げると反対の動作です。
つまりは股関節を中心に上半身と下半身を広げる動作なんです。
ガラケーと腸腰筋(ちょうようきん)
一昔前ですが、折りたたみ式のガラケーってもってませんでしたか?これです。
数字のボタンや通話口がある側が下半身、画面がある方が上半身だとして、股関節は蝶番(ちょうつがい)の部分にあたります。上下のつなぎ目です。
このつなぎ目、基本180度以上開かないですよね。腰を反らす動作は、このつなぎ目をさらに広げる動作になります。
人の身体にはこのつなぎ目の所に筋肉があるんです。
大腰筋と腸骨筋がそれにあたりますが、二つを合わせて腸腰筋(ちょうようきん)と呼ぶことがあります。
この筋肉は腰骨と脚の太ももの骨をグッと近づける方向に働きます。
ガラケーでいうとペタっと閉じる方向、つまり、身体全体として折りたたむ方向です。
「なるほど。けど、身体を折りたたむことってそんなにあるかな?」
って思われますよね。
実はこの筋肉、身体を折りたたむ時だけに働いているのではありません。
寝ている時以外は常に頑張っているんです。
「は?そんな意識ないよ」
ですよね。ごもっともです。
ピノキオと腸腰筋(ちょうようきん)
例えば、ピノキオの背もたれが無い人形をイスに座らせるとしましょう。何もしなければ、グシャっと折れ曲がります。
上の絵の右側で上から吊るされているお人形さん。イスに座らせようとしてもグシャっとなるだけですよね?
まっすぐ座るためには背骨を立たせる筋肉(背中側にあり、脊柱起立筋群などと呼ばれます)が頑張らなければなりません。ですが、これが頑張り過ぎると今度は後ろにひっくり返ります。
とすると、ひっくり返らないよういに腰から上を脚の方に引っ張る筋肉の頑張りが必要です。
「腰から上の上半身が後ろに反り返り過ぎないように引っ張る筋肉」=「腰から上の上半身を太ももに近づける筋肉」=「股関節を中心に身体を折りたたむ筋肉」=腸腰筋です。
背もたれの無いイスに座っている時、人の身体の中では、脊柱起立筋と腸骨筋が無意識に引っ張りあいをしてくれているんです。まるで、運動会の棒倒し棒を支えて頑張ってる子供たちのような感じです。
では、まっすぐ立っている時は。
そうです。腸腰筋は、先ほどよりもピーンと引っ張られた状態で身体が後ろに反り返らないように頑張っています。
二つ折りのガラケーを180度以上に開こうとしたらギシギシ言って、それ以上するとバキっなんてことになりますよね。
日常生活の中で身体を180度以上反り返らせることってそうそうありませんから、腸腰筋がそんなに引っ張られることはありません。
ですが、寝ている時以外は上半身の重さを支えて姿勢を維持するために頑張っているというのは、筋肉の働きで例えると重い荷物を落とさないように一日中肘を曲げている時の力こぶのような状態になっています。
腕、パンパンになりますよね。
で、そのままにしておくと肘が伸びにくくなってしまいます。
そうです。腸腰筋がパンパンになって伸びにくくなった状態が、腰を反らせにくくなっている状態なんです。
ぎっくり腰って?
こむら返りって経験されたことはあるでしょうか?
脚の筋肉がキューンとひきつって痛くて動かせない状態です。
こむら返りが起こるメカニズムについては詳しくお話するのは省きますが、腸腰筋でも同じことが起こります。起こると、そう腰を反らせないぎっくり腰です。
身体全体を折りたたむ働きをする筋肉がキューンとひきつると、「腰を伸ばす、反らす」ことは出来ません。
上半身の重さを支え、下半身とのつなぎ役にならなければいけない筋肉がキューンとひきつってしまったら「起きる」「立ち上がる」「寝返りする」など、どれにしても身動き一つとれません。
これらは腸腰筋がひきつって起こる代表的なぎっくり腰です。
もちろん、他の原因でぎっくり腰が起こることもありますが、その大元の原因には腸腰筋が関係していることが多々あります。
腰を伸ばせない、まっすぐ立てない、イスから立てない、四つん這いでないと動けない、杖や手押し車がないと動けない・・・どうですか?共通するのは、股関節が伸びない、二つ折り携帯を開けない状態ですよね。
また、ぎっくり腰までなっていないとしても、腸腰筋が伸びにくいということは、身体が常に前かがみになりがちということにつながります。
とすると、横からの姿をみて下さい。
今度はお尻から上の上半身が前に倒れ過ぎないように、背骨を立たせる筋肉(脊柱起立筋)が常に引っ張られながら頑張らなければなりません。
魚が釣れた釣竿の根元がピーンと張った、または甲子園のアルプススタンドで大きな校旗をもって頑張ってる応援団君みたいな状態です。
とすると、これまた腰の部分につねに負担がかかるため腰痛の原因になってしまいますし、常に引っ張られて固くなっている筋肉が急に縮む(腰を反らす動作ですね)とズキーーン!・・・ご想像の通りです。
ちなみに、この状態で頑張っていた背中側の筋肉がさらに伸ばされ(前かがみです)ても痛いですよね。
今回は腰を反らせにくい腰痛についてお話しましたが、腸腰筋が原因では反らすのも曲げるのも、なんならひねるのもツラい腰痛になってしまいます。
当院では、急激な腰痛にはハイボルトなどの電気治療器で先ずは痛みを軽減し、痛みの再発防止に楽トレを活用することでご好評をいただいております。
是非、お気軽にご相談ください。