仙腸関節性腰痛について

「船長!大変です!」

というほど痛いのが、この関節が原因の腰痛です。

仙腸関節炎とも言います。

そもそも「仙腸関節」というのはここ

 

骨盤の中にある関節なんですね。

場所でいうと、ズボンの後ろポケットの内側の縫い目のやや上辺りでしょうか。

キューピー人形のお尻側でペコっとくぼんだ辺りです。

ここが原因の腰痛は何をしても痛いですし、ジッとしていても痛みのため、身の置き場がなくなってしまいます。

ただ、「関節」とはいうものの、指や膝のような動きはありません。

自分で動かそうとしてもこの関節は動いてはくれません。ウイキペディアによると「3 – 5mm ほどの可動域(動く幅)しかないため外見や画像診断でもほとんど動きが判らない」とあります。

骨と骨が連結するところを「関節」といい、それらの骨どうしを筋肉が引っ張って、例えば指を曲げる動作になるのですが、この関節にそういった自分の意思での動きはないんです。

関節には「靭帯」というものがついていて、指ならある角度以上には反り返らないように支える働きをしてくれています。その角度以上に指が反り返ってしまった状態が「突き指」というケガですね。

 

この「仙腸関節」、実は、体中のあらゆる関節の中で最も強靭な靭帯でつながっていると言っても過言ではありません。

いえ、骨のつなぎ目が靭帯に埋もれているといった方が正しいかも知れません。スジというより貝柱みたいなイメージで、そのくらいガッシリつながっている関節です。

そこで、ガイコツの姿を思い出してみて下さい。まっすぐ立った時の姿です。

体重を支えるということは、頭や上半身の重さを両脚で踏ん張るということになりますね。

首から下の関節を見て下さい。

背骨は24個の積み木が重なるようにして出来ていますが、それぞれのつなぎの部分(椎間関節と言います)や膝や足首。これらは全て地面に平行です。

だるま落としの積み木みたいな感じですね。

で、その積み木と積み木の間には、それぞれクッション材が備わっています。

有名どころでいうと腰の椎間板です。背骨を作る23個の積み木の間には椎間板というクッション材があり、体重を支えているんです。

ですが、この仙腸関節は・・・その関節の面が地面に垂直ですね。

頭から腰にかけての上半身の体重がここで二股に分かれてしまうんです。

またまた、イメージしてみて下さい。

もしこの関節が不安定だったら。

浅田真央選手が4回転ジャンプして着地したらどうなります?

内村航平選手が鉄棒のフィニッシュで着地したら?

大変なことになりますよね。

けど、ならないんです。

浅田選手が内村選手が着地してもビクともしないくらい、強靭な靭帯で守られているのが仙腸関節なんです。

(先ほど、「3~5㎜の可動域」というお話をしましたが、ここが実はポイントで、逆に一切動き(遊び)がない関節だと、羽生選手や内村選手が着地するたびに割れるような衝撃がこの関節に加わってしまいます。また、この関節に遊びがあるおかげで人間は直立出来るとも言われます。また、いかに技術が発達した現在でもロボットでこの関節を再現出来ないそうです。ホンダのアシモの膝が少し曲がっているのは、この関節が行っているクッション性を膝で補っているのではないかと思います)

ですが、ここを痛めてしまうことがあるんです。

なぜ、そんなに頑丈な仙腸関節を痛めるようなことがあるの?

特に女性の場合はその可能性が男性にくらべてはるかに高いように思われます。

その原因はご出産や生理です。

お聞きになられたことがあるかも知れませんが、出産時には「リラキシン」というホルモンが大量に分泌されます。「リラキシン」には体中の靭帯を緩める作用があり、そのおかげで普段は上で述べたように強靭な靭帯で固定されている骨盤の靭帯が緩んで、赤ちゃんが生まれてきやすいようになるんですね。

ただ、それでも「鼻からスイカを入れるような」とか「ダンプカーがお腹の上を通るような」激痛だそうです。生理の時も同様に「リラキシン」が分泌されますので、靭帯が緩み関節が不安定になり、それを補うために筋肉の負担が大きくなり、肩こりや腰痛や膝の痛みに・・・

とすると、そういった時に腰やお尻に負担がかかるようなことがあると、仙腸関節を痛めることにつながります。

だから、男性よりも女性の方が痛める可能性が高いんです。

仙腸関節が原因の腰痛の治し方

この仙腸関節が原因となっている腰痛の場合、チョチョッと何かをすれば良くなるかというと、悔しいですがそうは簡単にいきません。

先ほどのガイコツの図と浅田選手や内村選手の着地を思い出して下さい。

この関節は立っているだけでも縦にずれようとします。

座ろうとすると、今度は前後にずれようとしてしまいます。

横になっていたとしても、ちょっとした寝返りでもねじれが起きてしまいます。

当院では、そういう仙腸関節性の腰痛の場合に特別なベルトをお貸出しし、先ずはこの関節を安定させることに全力を注いで頂きます。と同時に仙腸関節の炎症(ねん挫ですから、腫れている状態です)による痛みを抑える電気治療と、かつ仙腸関節に負担をかけてしまう筋肉の調整をしてまいります。

激しく痛めている方の場合、たとえば生理のたびに症状が出ないよう、痛みが解消されたあとでの関節周りの筋肉の調整が重要になってまいりますが、そういう方には「楽トレ」をご利用頂くことで再発防止につなげていただいております。