ひねりにくい腰痛について その1

「おらぁ、もっと素早く腰をひねれ!」

野球部だとバッティング練習で言われるんでしょうね。そんでもってひねりが甘いと

「そんなんだから、強い打球が飛ばねぇんだよ」と。

テニスでもそうでしょう。あ、ゴルフもそうか。けど、言っておきます。いいですか

「腰はひねれません(キリッ!)」

「は?何言うてんの?また、奇をてらった事言って目立とうとして・・・」

と思ってます?ノンノンノン。その辺をこれから書いていきますね。

先ずはこれを見てください。

人の背骨のうち、腰椎と呼ばれる部分です。次は、その一つ取り出した所を横から見てみましょう。

何だかごちゃごちゃしてるでしょ?逆に言うと、背骨のうちでこの「ごちゃごちゃ」してるのがある部分ものを腰椎として分類している、という方が正確ですね。ちなみに背骨は一本の棒ではなくて、ダルマ落とし人形のような作りになっています。

背骨はだるま落とし人形

ダルマ落とし人形で言うと、顔以外の積み木の部分の後ろ側にオマケみたいなのがついたモノ(椎体といいます)が24個あり、それらが頭蓋骨から骨盤までつながって一本の棒のようになっている状態です。

それぞれのつなぎ目には椎間板というクッション材があるので色んな方向に傾いたりしても、背骨全体としてグニャグニャとしてしなやかな動きに見えるんです。さて、その腰椎です。

関節突起」とあるのが見えますでしょうか?ここがポイントです。実は専門学校での解剖学の授業でこの辺りは一番最初に教わるのですが、ここで「???」になる学生もけっこういます(かく言う私がそうでした^^;)。

「関節突起」というくらいなので、この突起部分が上の椎体と下の椎体をつないでいますがその切り口、どうです?

縦になってませんか?地面に水平じゃなくて縦になっています。胸の前で手のひらを合わせるような感じです。ここ、難しいですよ。

上の絵で、右上に「上関節突起」というものと右下に「下関節突起」というものが見えますでしょうか?

背骨の中で腰椎と呼ばれる椎体は5つあって、絵の「上関節突起」はその上にある椎体の「下関節突起」と、絵の「下関節突起」はその下にある椎体の「上関節突起」と手のひらを合わせるようにくっついているんです。

地面に水平だったら簡単にひねれますが、縦だと・・・そう、ロックがかかって横滑りしません。電車の連結部分みたいな状態です。ペットボトルのふたをひねるような動作はもちろん出来ません。とすると当然ですが、腰椎でひねりの動作は起こらないんです。

「腰はひねれません(キリッ!)」

の意味、お分かりいただけました?

ま、もちろん全くゼロじゃないですよ。ないですが、腰椎(5つの椎体)全体でも左右合わせて約10度ほどしか動きません。動く動かないじゃなくて、こうなると車のハンドルでいうところの「遊び部分」でしかありませんね。

上の絵の(2)が腰椎部分でのひねりの角度です

「けど、実際には腰ひねってんじゃん!」

というお声もあるでしょう。じゃ、いっちょ試してみましょうか。

前回の前かがみシリーズその2でもやっていただきましたが、「気をつけ――っ!」の姿勢ですが、この時に思いっきりお尻と背中に力を入れて下さい。お尻をギュッとしめて思い切り胸を張るような形です。どうです?ひねれます?

お尻や背中の筋肉を固めると・・・そうなんです。ひねっているのは腰ではないんです。

腰椎の上下にあるお尻や背中の筋肉が伸び縮みすることで、「身体全体としてひねって見える」というのが正解なんです。

野球のバッティングでいうと右打者の場合ボールを打ちにいく動作は、筋肉に着目すると以下の3つの動きの連動ということになります(・・・あんまり、深く考えないで下さいね^^;)

・左のお尻の筋肉(前述の大殿筋や外旋六筋)が踏み込んだ体重を支えながら引き伸ばされる動き

・バットを持った上半身をすばやく左に回旋させるために左広背筋や左内腹斜筋が急激に縮む動き

・左外腹斜筋や右広背筋などが引き伸ばされ、右内腹斜筋が引き伸ばされる動き

もちろん他にたくさんの筋肉も連動してくるのですが、

強い打球を打つ←バットをすばやく振る←腰を素早くひねる

ために必要なのは、「身体全体としてひねって見える」ために働く筋肉が素早く強く伸び縮みすることが大切なんです。

「じゃ、それらの筋肉を強化すればいいの?」

もちろん強化、筋トレは大事です。大事ですが、先ほどやっていただいた「気をつけーーッ」を思い出して下さい。

強化しても固くなってしまっては、いくら腰をひねりたくてもひねれません。

なんなら、その固くなった筋肉のまま無理して練習すると必ずどこかを痛めます。そう!もちろん腰ですね。

「腰をひねると痛いんよ」という場合腰自体に問題がある場合もありますが、実は腰以外に原因がある場合も多々あります。

「じゃ、今言ってた筋肉を鍛えながら柔らかくすればいいのね」

はい、そうです。そうなんですが、実はそれだけじゃ腰のケガは防げません。

その辺は次回「ひねりにくい腰痛 その2」で。