ひねりにくい腰痛と肩・肘の痛み その1

とは言え、前回から続く「ひねりにくい腰痛シリーズ第4弾」でもあります。

「野球に肩や肘の故障はつきものなんだから、うまく付き合っていくのが一人前の選手だ」みたいな事言ってる指導者がいたら教えて下さい。

ぶん殴っちゃりますから。

スポーツの動きは複雑で、腰でいっても前かがみ、反らし、ひねりが複合的に混ざり合って一つの動作となります。前回まではお尻や背中や腸腰筋などの筋肉とゴルフスイングや野球のバッティングなどの身体を(腰じゃないですよ)ひねる動作との関係をお話ししてきました。今回はピッチャー編です。

投げるポジションだから「しゃぁないやんけ!」?

「ピッチャーは他のどのポジションよりも投げなアカンのやから、そりゃ肩や肘を痛めてもしゃぁないんちゃうの?」という人がひたら、これまた教えて下さい。以下同文ですから。

もちろん、他のどのポジションの選手よりたくさん投げなくちゃいけないのですから、その分故障のリスクは高まります。

けど、「じゃ、リスクを下げる努力はしてますか?」ってことであり「故障の起こすメカニズムを理解してますか?」なんです。

「たくさん投げるから」???

じゃ、「球数制限」って何なんですか?少なけりゃいいんなら、プロのピッチャーなんてペナントレースが始まるまで一球も投げなきゃいいじゃないですか?

昨今話題になった、高校野球における「球数制限」もそう。

要は、「痛める」には必ず原因があるんです。

ピッチングは丸太ん棒を振り回すのと同じ

じゃ、今回先ずは肩の筋肉からいきましょう。肩のケガというと、インナーマッスルとかアウターマッスルという言葉がよく問題になりますね。その辺の詳しいはこのページでは割愛させていただきます(ちなみに、ちまたでよく言われるインナーマッスル・アウターマッスルというのは便宜上の言葉で、解剖学上の厳密な分類ではありません)

前回までで、「お尻や背中の筋肉が固いと身体をひねりにくい」とお伝えしました。

ピッチングの連続画像です。ワインドアップであろうとセットアップであろうと、投げる時ピッチャーは一度バッターに対して横向きになります。

右投げピッチャーなら右足でプレートを蹴り、左足(バッターの方向)に体重移動をさせつつ地面を踏み込んで軸をつくり、その反発力を右手指先に伝えてボールを投げます。いいピッチャーはムチがしなるような感じがしますね。

ただこの時大事なのは、一度横向きになった身体がボールが指から離れる瞬間には、バッター(キャッチャー)に対して正対していることです。でないと極端な話、横向きのままバッターに向かってボールを投げることになります。いわゆる「手投げ」です。

ボールって結構重いし、いやいやそれ以前にそのボールをもっている腕も重いんです。

丸たん棒を持ってるとしましょう。

その一方の端をつかんで振り回してみましょうか?結構大変です。

ちなみにですが、敢えて言うならインナーマッスルは、丸太ん棒が飛んでいかないようにギュッと握っている手になります。アウターマッスルは振り回すために頑張っている他の筋肉です。ハンマー投げの室伏さんで言うと、ハンマーを握っている手の部分が肩関節のインナーマッスル、ワイヤーが腕で球の部分はもちろんボール。その他がアウターマッスル・・・みたいな感じでしょうか。

例えば手のひらを擦りむいたとしましょう。他の筋肉がいくら頑丈でも丸太ん棒を振り回すどころか、握ることも出来ませんよね。インナーマッスルとはそういうものです。

下の図の棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋が肩関節のインナーマッスル(別名、ローテーターカフ)と呼ばれている筋肉で、腕の骨(上腕骨という丸太ん棒)が肩甲骨とのつなぎ目(手)から外れない(飛んでいかない)ように働きます。ですから、もちろん筋力としては弱いよりは強い方がいいに決まっていますが、柔軟性がないと・・・

ね、話が長くなっちゃいますので、ここではこの辺で(^^;

肩を痛めるメカニズム

ピッチャーがボールを投げるためには、一度横向きになった身体をバッターに正対させる必要があります。大リーグでも活躍された野茂さんなんて、後ろ向きにまでなっちゃいますよね。

しかも、それをダラダラやったのではダメ。瞬間的な動きであればあるほど、地面を蹴った力が爆発的に指先に届きます。

逆に、お尻や背中の筋肉が固くて瞬間的に身体をひねりにくい状態だと

→瞬間的に身体をひねることが出来ない

→指先に爆発的な力を届けることが出来ない

→それを補うために、肩だけで(丸太ん棒を持っている筋肉だけで)早いボールを投げようとする

→練習すればするほど肩に負担がかかってしまう

→故障の原因となる

いかがでしょうか?

もし、このピッチャーが休んで痛みが治まったとしましょう。で、練習再開します。けど、お尻や背中の筋肉が同じ状態なら?そうです。故障を繰り返します。

なんなら、無理して身体をひねるとして腰痛を起こしてもおかしくありません。

「お前、すぐ肩痛い言うなぁ。根性入ってないんじゃないか?」みたいな事を言う指導者がいたら教えて下さい。ぶん殴っちゃりますから。丸太ん棒で。

次回は広背筋という筋肉とピッチャーの故障についてお話しします。